portrait | ナノ
3.5日目


「お前、学校は?」

「通っていませんけど」


まるで当たり前のように言われる。
観光じゃなくて、留学でもないのかよ。


「画家になるんじゃなかった?」


そう言うと、ふゆが困ったように笑った。


「高校は美術科のある学校に通っていました」


ぽつりと語り出す。
初めてふゆ自身の話を聞いた気がする。


「そこで基本の技術や歴史は学びました。だからもう良いんです」

「何が良いの?」

「あそこで学ぶ事はもうありません」


そう断言するふゆ。


「私が求めているものは学校では得られません」


二十歳でそんなこと言えるって何者だよ。
心の中でツッコミを入れるが、ふゆの目は真剣そのものだった。


「お前の目的って何なの?」


初めて会った日には気にもしなかったこと。
それが今はとても気になる。


「後悔しないで生きること」

「…!」

「人生の目的を見つけること。そして早めに達成することです」


ふゆのその言葉に日本での出来事を思い出す。


ETUで俺はそれを見つけられそうだったんだ。
達成できそうだったんだ。
或いは、達成したのかもしれない。


だけど今はどうだ。
こんな生活、空しいだけじゃないか。


「そんなの早くない方がいい」

「…どうしてですか?」

「その後の時間がつまんないから」


ふゆは一瞬寂しそうに笑うと、また困ったような笑顔に戻った。


「私はそれでも構いません」

「それより、何も成せぬまま死んでしまう方がずっと嫌です」


そして元気な笑顔を見せる。
そのふゆに子どものような無邪気さを感じた。


「これが私の人生だ!って言えるような絵を描きたいんです」


初めて会った日に「絵は手段」とか言ってたっけ。
そう言うことか。


「後のことは、またその時に考えます」


ふゆは俺とは正反対だ。
だけど、どこか似ている気がする。


「変なヤツ」

「よく言われます」


だから放っとけないんだろうか。



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