portrait | ナノ
2.5日目
そんなことをしてる内に辺りが真っ暗になる。
「帰んないの?」
「そうですね、そろそろ…」
ふゆはぎこちない動きで方向を変える。
俺はそれについて行く。
そして会話もないままふゆの家に着いた。
「…達海さん」
「なに?」
ふゆは今日一日、後ろにいる俺に話しかけてこなかった。
だからふゆと話すのは久し振りだ。
そういや日本語で話すのも久し振りなんだよな。
ノスタルジーってヤツなんだろうか。
それで俺は、ふゆと別れられなかったんだろうか。
「何か忘れ物でもありましたか?」
まっすぐな目でそんな事を聞かれる。
その一言でやっと分かった。
どうして俺がコイツと別れられなかったのか。
「忘れ物、ね…」
「だったら最初から言ってくれれば…」
「気付いたの今だし」
ふゆは昨日と同じ、ぽかーんって顔をする。
「やっぱもうしばらく泊めてよ」
ふゆが手に持っている鍵を掠め取る。
「もう少しお前と一緒に居たい」
返事は聞かずに、俺は奪った鍵で扉を開けた。