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ETUの広報である有里は監督の達海を探していた。


自室で仕事をしていると思ったのだが居なかった。
考え事をする時に使うグラウンドにも姿は無い。


「今度使う写真撮るって言ったのに…」


カメラを片手に呟く。
その言葉に混じった溜息は、無人の廊下に消えていった。


「…ん?」


クラブハウスの入り口の方から話し声が聞こえた。
それが気になった有里は声のする方向へと向かった。


(あー、達海さんこんな所に!)


真っ先に見えた達海の姿に有里は心の中で叫ぶ。
しかし、やっと見つけた目的の人物は誰かと話しているようだった。


有里は物陰に隠れながら様子を疑う。


達海が話しをしている相手はどうやら女性だ。
とは言っても、遠くからぼんやりと見る分には少女のようにも映る。

有里は途端に青ざめた。


(もしかして達海さんがまさかの犯罪行為!?)


親戚といった雰囲気ではない。
どちらかと言えば、恋人のような空気だ。


有里は職業病からか、真っ先にマスコミへの心配をした。


(でも、なんか達海さん…)


楽しそう。嬉しそう。
どの推測の言葉も微妙にしっくりこない。


事情を知らない有里がその様子に合う言葉を探す。
それが見つかった時、有里は手にしていたカメラを構えた。


「幸せそうにしちゃってさ」


有里は二人にピントを合わせてシャッターを押した。




それは何でもないただの一枚の写真。
これから二人が積み重ねていく、幸せな日々の一部だ。




Fin.



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テーマ「人外ファンタジー」
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