portrait | ナノ
The color of tomorrow.


外に出るともうすっかり夜だった。


全てを覆う夜の闇をあらゆる光が照らしている。
星の小さな光、月の淡い光、下からの人工的な白い灯り。


その全てが重なって一つの夜空を作ってる。


色に色を重ねていく。
そうして出来上がった色が、また誰かに伝わって変わっていく。


だから何時だって世界の色はごちゃ混ぜだ。
それが良いとか悪いじゃなくて、事実としてそうだ。


その時々で色を変えるこの世界を愛せるか。


愛せなくて逃げ回る日々は終わった。
じゃあ、これからはどんな日々が待っているんだろう。
今から楽しみでしょうがない。


ごちゃごちゃの夜空が、こんなにも愛おしく思えるから。
雨空の白に違う色を足してみたいって思えるから。


私にとっての絵が、瞬間を永遠に留めておくものじゃなくて。
現実を上書きできるものに変わってきているから。


だから、やっと歩き出せる。


世界が色付いて輝きだす。
街も人も、前よりずっと素敵に見える。


「……あ…」


夜の暗さの中に赤い輪郭を描く巨大な雷門。
目を奪われ、足を止めそうになる。


でも、私は立ち止まらなかった。


ずっと待たせている人がいる。
こんな私を待っててくれてる人がいるから。


寄り道は今までに散々してきた。
今度こそまっすぐに行こう。迷わずに。


目的地に近付くと同時に、ひとつの人影が見えた。
私は駆け出す。


自分なりの全速力で、今度こそあなたに追いついてみせる。



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テーマ「人外ファンタジー」
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