portrait | ナノ
Any day


五年ぶりにふゆと再会した。


見かけはちっとも変わっていない。相変わらずの童顔だ。
なら、中身はどうだろうか。


「まだ完成してねーの?」


人生の目標だと言っていた一枚の絵。


ここに居た時点で大体の予想はつくが、一応聞いてみる。
俺の問いにふゆは小さく頷いた。


「あれから五年も生きてて、絵は完成してなくて、そんで今日も生きてるんだ」

「…はっきり言わないで下さい…」


ふゆの目標はまだ叶っていない。
だからこそ、こうして再会できたとも言える。


何が『後悔しないで生きてたらまた会える』だよ。
再会できたのは偶然だ。


近くに居たって、俺がこうして会いに来なきゃ会えなかった。


「どうして俺に会いに来なかったの?」

「それは……」


返答に詰まるふゆ。俺はそれを待つ。


「会いに行こうと思ってたんですけど、雷門に邪魔されて…」

「はあ?」


本当か嘘か分からない、予想外すぎる答え。
ただまあ、コイツなら有り得るか。


「ま、良いけど」


どうやら中身も変わってなかったみたいだ。
込み上げる安心感に、それまで感じていた憤りも消えた。


今までのことはもう良い。大事なのはこの先のことだ。


「雷門を描き終わったら今度はどこ行くの?」

「日光とかどうかなーって思ってます」

「もう外国は終わりか?」

「はい」


まだ旅を続けるつもりらしい。
それも当たり前か。

ふゆは俺と別れた後も出会う前も、ずっとそうして来たんだから。


だけど今回はそうさせない。


「お前さ、俺が言ったこと覚えてる?」

「えっと…どれでしょう?」

「別れ際のヤツ」

「!」


ふゆの顔が真っ赤になる。


これは期待できそうだ。
漠然と感じていた不安が消えた。


「ふゆ、明日クラブハウス来い」

「ETUのですか?」

「そ。良いモン見せてやるから」

「良いもの?」


首を傾げるふゆにニヤリと笑ってやる。


「見てのお楽しみ」


時間ってのは面白い。
まさか俺達の立場が逆転するとはな。


ふゆを捕まえる方法がようやく分かった。
それは皮肉にも、五年前、ふゆが俺にしたのと同じことだ。



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