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The day


「相変わらず、ですね」


テレビで、雑誌で、新聞で。
その全てのメディアを騒がしているのは、私の知っている人。


数年前に出会って、一週間だけ生活を共にして、そして別れた人。


今はETUの監督をしているらしい。
あの時よりずっと生き生きしている。


別れる時は辛かったけど、今なら正解だったと思える。
達海さんが正解にしてくれた。


「先生!仕事もしないで何テレビぼーっと見てるんですか!」

「…水鳥さんは今日も朝から元気ですね」

「少しは締め切り気にして下さい!」

「はいはい」


私と言えば、少しばかり名の知れた画家になっている。


生活が苦しくなった時。
小遣い欲しさに有名なコンクールに応募したら入選しちゃって。
そこから出生のこともあって注目されて、会社と契約させられて。
マネージャーさんが付いて…今に至ります。


だけど、目的である一枚の絵はまだ描けていない。
海外を大体回って日本に帰ってきたけれど、モチーフに出会えていない。


そんな時に達海さんがご近所に居るって、どんな因果なんだろう。


『次に会った時は、絵が完成してなかろーが何だろーが、絶対に逃がさない』


別れ際の言葉が浮かぶ。
頭を振って打ち消した。

そんなの、無効どころか、最初から資格すらない。


「デッサンしに行って来ますね」

「締め切りは一週間後ですからね!」

「はーい」


すぐにでも会いに行けるのに、会いに行けない。
近いようで遠い、達海さんとの距離。



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