portrait | ナノ
ここから始まる


結局、友達とも恋人とも呼べない関係のまま。
俺達は別れを迎えている。


「その生き方、変えるつもりねーの?」

「はい」


どんな時も満足気に笑うふゆ。
俺も今日からはそう生きようと決めた。


だけど、今ばかりは納得できるものではない。


「俺と一緒じゃダメなのか?」


ふゆが頷かないのは分かってる。
それでも、気持ちは俺と同じであって欲しい。


「お互いに後悔しないで生きてたらまた会えます」


簡単に本心を覗かせないふゆ。
陳腐な駆け引きがもどかしくなる。


「お前を手放したことが後悔になるって言ったら?」


俺の本音をぶつける。
それでやっとふゆは表情を変えた。


満足気な笑顔から、驚いたような表情に。
でも、すぐまた笑顔に戻った。


「私は後悔しませんよ」


そう言って手を差し出してくる。


「達海さんに出会えたこと、感謝しています」


俺は差し出された手を引っ張ってふゆを抱きしめる。
これには流石のふゆも驚いたみたいだ。


腕の中にすっぽりと収まる小さな存在。
それを手に入れられないほど、今の俺は無力なんだ。


「…今回だけだからな」


自分の無力を認めるのも。
ふゆが隠したがってる本音を聞かないでおくのも。


「次に会った時は、絵が完成してなかろーが何だろーが、絶対に逃がさない」


ふゆは返事をしなかった。
その代わりに、俺の背中にそっと手を回した。



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