portrait | ナノ
6.8日目


「俺がダメな時こそ俺が頑張れと?」


皮肉を込めて言ってやる。
ふゆは困ったような笑顔を見せた。


「足のことは後悔していないんですよね?」

「まあね」

「でも、私を抱いたらきっと後悔しますよ」

「…なんで?」


ふゆはどこまで俺のことを知ってるんだろう。
たまに見透かされているような気になる。
今もそうだ。


「達海さんの本心ではないからです」


違うのに言い返せない。


俺がふゆに逃げていると思ってるんだろうか。
そうかもしれない。
だけど、欲しい気持ちは嘘じゃない。


ふゆがゆっくりと身体を起こす。
俺は仕方なく上から退いた。


「考えたんですけど、監督業はどうですか?」

「カントク?」

「はい。サッカーの監督です」


ふゆは笑う。
雨が大好きって言ってたのと同じ笑顔だ。


「監督ね…」


結局ここに戻ってくるのか。


「きっと毎日が充実しますよ」


そんでお前は違うとこで生きていくのか。


「達海さんにとってサッカーはそう言うものだと思いますから」


お前が満たしてはくれねーのか。


何で言っても伝わらねーかな。
お前への気持ち。


「彼らに頑張れと言ってはいけません。
 何故なら、彼らは既に頑張っているからです」


「達海さん、うつ病じゃないじゃないですか!」


きっと今のままじゃ進めないんだ。
お互いに、やり遂げないと進めない。


だから、今のふゆとの時間を楽しく過ごそう。


俺達は次の日の朝になるまで他愛の無い話をした。
次に会った時、また始められるように。



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