portrait | ナノ
6.6日目
「あ、達海さん」
料理をしていたらしいふゆの姿が目に入る。
テーブルを見るといくつかの皿が並べられていた。
「夕飯作ったんです。良かったらどうぞ」
席につこうとしたふゆの肩を掴んで止める。
そして、そのまま押し倒した。
いつも床に散らばっていた絵の具も今日はない。
小奇麗に片付けられた部屋が、別れをより実感させる。
「お前、俺のファンなんだろ?」
ふゆに何か言われる前に自分から言う。
初めて会った日、ふゆは確かにそう言っていた。
「は、はい…」
「じゃあ良いじゃん」
「何がですか?」
まだ状況を理解できていないらしい。
そういや初めて会った時もそうだった。
ふゆの手を引っ張って雨の中を走った。
ほんの数日前のことなのに、どうしてこんなに懐かしいんだ。
「憧れてるヤツに抱かれるなんて良いだろ?」
この温もりを失いたくない。
ふゆにキスしようと顔を近付けた。