portrait | ナノ
6日目
「達海さーん?」
達海さんが使っている部屋の外から呼びかける。
けど、返事はない。
「もうお昼ですよ? お腹すきませんか?」
いつも11時には起きてくる達海さんが12時を過ぎても起きてこない。
起こしに来たのだけれど反応はない。
多分だけど、具合が悪いとかじゃない気がする。
そうなると私にはどうにも出来ない。
「何かあったらいつでも言って下さいね」
そう声をかけて扉の前から立ち去る。
今日は外には出掛けず、一日家に居るつもりだ。
だから問題はない。ないんだけど。
(達海さんと話したかったな…)
達海さんと過ごす最後の一日。
話したいことがたくさんあった。
聞いて欲しいこともたくさん。
だけど、それはきっと叶わない。
一言だけ伝えられれば良い。
たった一言だけ。