portrait | ナノ
5.7日目
暗くなるまで歩き回って、やっと家に帰る。
夕飯は帰り途中に買ったホットドッグ。
朝はアップルパイなんて作ってたくせに夜は手抜きだ。
まぁ、美味しいから良いけど。
「そんでモチーフとやらは見つかったの?」
「はい」
意外な返事。
一体、今日のどこで見つけたんだ。
「この国の空を描いてみようと思いました」
「それって需要あんの?」
「無いと思います」
苦笑いするふゆ。本当に欲が無いヤツ。
俺も人のことは言えねーけど。
「それでも私は描きたいんです」
ふゆが時折見せる強い意志。
それがあるから異国の地で一人でやって来れたんだろう。
「じゃあ明日からその制作?」
ホットドッグにかぶりつく。
だからふゆの一瞬の表情を見逃した。
「達海さんに言わなくちゃいけないことがあります」
「…なに?」
俯くふゆの表情は見えない。
だけど嫌な予感がした。
「私は2日後にココを発つことにしました」
それは、あまりにも唐突に告げられた別れ。
「だから明日が、達海さんと過ごす最後の日です」
ふゆを手に入れられないまま失う。
過去の記憶の焼き直しのような出来事だった。