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5.5日目


頬に何か冷たいものが当たる。


「やっべ…」


初めて会った日のように、ふゆの手を掴んで走り出す。


「達海さん?」

「雨だよ。傘ないだろ」


雨はあっという間に本降りになる。
取りあえず、屋根のある所で雨宿りすることにした。


「これでもまだ雨が好きかよ」


気付いてすぐに走ったとは言え、少しは濡れた。
嫌味を込めて言ってやる。
なのにふゆは嬉しそうに笑った。


絵の話しをする時とはまた違う表情。
初めて見るその表情に少しドキッとした。


「やっぱり大好きですよ、雨」

「…そーかい」

「達海さんとこうして居られるのも、雨のお陰ですから」


散々振り回された後のストレートな言葉。
効かない方がおかしい。


どうしよう。コイツの全てを今すぐ手に入れたい。


「ふゆ…」


その頬に触れようと手を伸ばす。


「あ、晴れましたよ!」


見事にかわされた。
ふゆは屋根の外へ駆け出していく。
まるで子どもだ。


「ったく……」


俺はその後をのそのそとついて行く。
何となく空を見上げてみると、晴れ渡った青空が広がっていた。


ふゆが純粋ではないと言った雲の白。
その理由が少し分かった気がした。


(比べられる物がある時点で純粋ではない…か)


俺だって現役の選手をやっていた時はそんな気持ちを持っていた。
ふゆの夢もきっとそうなんだろう。


『達海さんとこうして居られるのも、雨のお陰ですから』


だったら、あの言葉は何なんだよ。



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