portrait | ナノ
5.4日目
行き場の無い想いを抱えたまま、ふゆと外に出る。
天気は相変わらず悪い。
この国の天候はいつもグズグズしてる。
今にも雨が降り出しそうだ。
にも関わらず、ふゆは楽しそうに歩く。
後ろから見てても分かるくらいに。
「何か嬉しいことでもあった?」
「はい、雨が降りそうです」
それの何が嬉しいんだ。
雨が好きなヤツなんて珍しい。
「雨空って白いの知ってますか?」
「そーなの?」
「青空に浮かぶ雲の白とはまた違う白です」
ふゆは更に歩を弾ませる。
「私は雨空の白こそが純粋な白だと思うんです」
「青空の雲の方が白いじゃん」
「それは青と比較した白さですよ」
ふゆが振り向く。
夢を語っていた時と同じ、子どものような無邪気な笑顔。
「純粋って、混じり気が無いってことだと思いますから」
ふゆはこんな話をする時だけ元気そうだ。
本当に楽しそうに話す。
だから、これがふゆの本当にやりたいことなんだと分かる。
この国のぐずついた空をもう一度見上げてみる。
さっきほど陰鬱な感じはしなかった。