portrait | ナノ
5日目
「おはようございます、達海さん」
今日も11時過ぎに起床する同居人。
結局『達海さん朝弱い疑惑』は疑惑のままだったな。
「何かいい匂いする…」
「アップルパイ焼いたんです。食べますか?」
「食べる」
アップルパイを切り分けてお皿によそう。
紅茶も添えれば完璧だ。
「美味い。お前料理できんのな」
「簡単なものなら」
自作のアップルパイを一口食べてみる。
可もなく不可もない味だ。
「アップルパイって作るの簡単なの?」
「慣れてしまえば何でも簡単です」
「ふーん…」
そうは言っても、自分で何かを作るのは久し振りだ。
達海さんとの生活も買ったもので済ませていた。
だから驚かれるのも無理はない。
私が自分で料理をする時は何かの区切りの時。
自分でそう決めている。
昨日、決めたことがあるから。