Kiss me, Darling! | ナノ
Good morning, Darling!


「ん……」


窓から差し込む朝日で目が覚める。
あれから寝ちゃったのか。


同じベッドにいる恋人は、この眩しさの中でも構わずに眠っている。
…本当に大した人だ。


時計を見るとまだ6時。
大学もない土曜日の起床にはまだ早い時間。
それでも私は身体を起こす。ひとつ伸びをすると少し目が覚めた。


こんなにぐっすり寝たのは久し振りだ。
最近は考え事をしていてあまりよく眠れていなかった。
その原因は勿論、私の隣でまだ眠っている恋人にある。
なのに、その人の腕の中でだけ快適に眠れるというのも皮肉な話だ。


「…………」


結婚。
恭平くんもいい歳だし、そろそろ身を固めないと。
私以外の誰かと。


それを言うと恭平くんは怒るけれど。
実際、昨日もそれでちょっとした喧嘩(?)をしてしまったけれど。


恭平くんがくれた髪飾りを手に取る。


(ちょっとしたことで嬉しくなるから、ダメなんだよね…)


どうして相手が私じゃダメなのか。
そんなの決まってる。
私じゃダメだからだ。


今だって迷ってしまっている。


本当はね、恭平くんのこと起こしたくないんだよ。


恭平くんと出会ったばかりの頃。
私はまだ高校生だったし、冷めていたところもあったと思う。
けれど、大人ではなかった。
だから許されたかもしれない。


でも今は、成人した立派な大人だ。
こんなどうしようもないワガママを言ってたらダメだ。


私はあの時から、何も変われて無いんだよ。


*** *** ***


「恭平くん、恭平くん」


布団越しに肩を叩く。


「…理乃ちゃん…」

「朝だよ。起きて」

「いま…なんじ…?」

「6時半」


一通りの身支度は整えて、今の時刻は6時半。
走りに行くには、ちょうど良い時間。


恭平くんがゆっくりと身体を起こす。


「ほら、走りに行くんでしょ?」


まだ目が覚めきっていない恭平くんにハッパをかける。


すると、どういう事だろうか。
しゃがんだままの私は恭平くんに抱きしめられた。


「土曜日だし、今は理乃ちゃんと一緒にいたい」

「…寝ぼけてるの?」

「起きてるよ」


出会った時から変わらない、少し困ったような笑顔。


ほら、私はやっぱりダメだ。
嬉しさを押し殺してこの人を送り出すなんて、私には出来ない。


私はまだ、ワガママな子どもだから。




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