Kiss me, Darling! | ナノ
ありがと。
「実は起きてたとか…言えねー…」
それでも寝たフリを続けられた自分を取りあえず褒めよう。
意地っ張りな理乃ちゃんのことだ。
俺が起きてたなんて知ったら数日は話してくれないだろう。
(意地っ張りっつーか、恥ずかしがり屋か?)
隣で静かに寝息を立てる理乃ちゃんを見る。
理乃ちゃんが布団に入ってからまだ五分と経ってない。
前はこんなに寝付きが良い方じゃなかった。
さっきの理乃ちゃんの言葉が頭を過る。
『家事も結構大変なんだよ?』
本当にそうなんだと実感する。
家事をしない俺にはきっと分からない苦労があるんだ。
思い返すと、理乃ちゃんは一日ずっと家の事をしていた気がする。
なのに俺は手伝うどころか邪魔してばっかりだった。
「…ゴメン…」
理乃ちゃんの頬に触れる。
伝わってくる暖かさに少しほっとした。
理乃ちゃんはこんな俺と一緒に居てくれてる。
この嬉しさはどうやったら伝わるだろう。
どうやったら理乃ちゃんの助けになれるんだろう。
答えはわからない。
だけど、この先も一緒に居ればきっと見つかる。
「おやすみ、理乃ちゃん」
触れていた手を離して、その代わりにキスを落す。
理乃ちゃんの表情が少し緩んだような気がした。
大変な家事を頑張ってくれてるのは俺の為だって思ってもいい?
図々しいって怒られるだろうか。
それとも笑って頷いてくれるだろうか。
一緒に感謝の気持ちも伝えるから、その時は君の本音を教えて欲しい。