Kiss me, Darling! | ナノ
いただきます。
手間も時間もかけた夕ご飯。
食べるのはその半分にも満たない時間。
「またアレやるの?」
「うん」
アレと言うのはETUで不定期に開催されるカレーパーティーのことだ。
地域とも繋がれて、選手にとってもプラスになるイベントらしい。
「良かったら理乃ちゃんも来てよ」
「考えとく」
私がそう答えてその話題は終わる。
しばらく無言が続くと、急に恭平くんの手が止まった。
「もしかして理乃ちゃんはカレー嫌い?」
何かと思えば、そんな的外れな事を深刻な表情で聞いてくる。
「どうして?」
「理乃ちゃん、あんまりカレー作らないし」
今度は的外れでもない指摘。
私は返答に困ってしまう。
あんまりどころか、作ったことは一度もない。
作れないワケじゃないけど意図的に避けてたメニューだ。
「…食べるのは好き」
「え、じゃあどうして?」
言うのも憚られるような子どもっぽい個人的な理由。
恭平くんの好物をわざわざ避ける、その理由。
「簡単に美味しく作れちゃうから嫌い」
時間をかけるほど愛情も深まる?
なんてね。