Kiss me, Darling! | ナノ
いってきます。


朝刊に挟まったチラシのチェック。

献立を考えながら歩く店までの道。




「買い物に行ってくるね」


午前中の家事が一通り終わり、時刻は正午。
私はリビングでテレビを見ている恭平くんに話しかけた。


「え、昼飯は?」

「恭平くんお腹空いてるの?」


朝食が大分遅れたからお昼は抜きでいいと思ってた。
実際、私はそんなに食べたくない。


「大丈夫、ちょっと驚いただけ!」

「そう…?」


慌てて取り繕ってます、みたいのがバレバレな恭平くん。
私がじっと見つめると恭平くんの目線が泳いだ。


「…ゴメン」

「別にいいけど」

「俺も一緒に買い物行くよ」


そんな流れで、私一人で行く予定だった夕飯と日常品の買い物は。
恭平くんと二人で行く+昼食の買い物に変更になった。


「今日のメニューってなに?」

「迷い中…」


急遽、昼のメニューも考えないといけなくなった。
行き詰って空を見上げてみる。


そうだ、今日は雲ひとつない快晴だったんだ。
普段はこういう所からヒントを得たりするのに。


洗濯物を干す時は嬉しかったけど、状況が変わると途端に恨めしく感じる。


「恭平くんは何が食べたい?」

「俺は何でもいいよ」


今の私が一番困る返事。
それでも恭平くんは笑顔で言葉を続けた。


「俺、理乃ちゃんの料理大好きだから!」


そんなことを言われたら、ますます逃げ場がなくなる。
でも、ちょっとだけ嬉しい。


相変わらず浮かばないメニューを考えるのが苦じゃなくなった。
むしろ楽しく思えてきた。


恭平くんの一言で変わるの。不思議だね。



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