Kiss me, Darling! | ナノ
ごめんね。
お日様を隠す雲がひとつもない青空。
代わりにその青空を飾るカラフルな洗濯物。
リビングから聞こえるテレビの音。
「理乃ちゃん、俺も手伝うよ!」
遅めの朝食の後。
その負い目からか、恭平くんがそんな事を言い出した。
私はベランダで洗濯物を干していた所だ。
きっとそれなら自分も出来ると思ったんだろう。
だけど私は今までのことを思い出す。
その記憶はどれも、恭平くんの家事能力は0だと物語っていた。
朝のせいで全体的に予定は押している。
だからこれ以上、面倒ごとは増やしたくない。
断りを入れようと恭平くんを見る。
すると、その瞳は意外に真剣だった。
(ホント…こういう所…)
家事なんて出来ないくせに、そんなこと本気で言ってみたり。
折角の休みなのに、私のことなんか気遣ってみたり。
結婚しても、恭平くんは変わらなく優しい。
最近はそれが不満だったりもする。
「現状より酷くなるから良い」
「そんなに!?」
ショックを受ける恭平くんを他所に作業を再開する。
しばらくしてトボトボと去っていく恭平くんに心の中で謝った。
(ゴメン、でもね――)
もっと私に甘えてほしいし、頼ってほしい。
家のことは任せておいて。
だから、休みの日くらいゆっくりして。