Kiss me, Darling! | ナノ
おはよう。
鳴り出す前に止めた目覚まし時計。
美味しそうに仕上がった朝ご飯。
「恭平くん、起きて」
「んー…」
「休みだからって寝過ぎは身体に毒だよ」
時刻はもう8時過ぎだ。
いつも6時には起きて走りに行く人なのに。
「恭平くん」
布団に包まれているその身体をゆする。
恭平くんは嫌そうな顔をしたものの、起きようとはしない。
こうなると私もムキになってくる。
頭を軽く叩いたり、頬をつねったりしてみる。
それでも恭平くんは頑なに目を開けようとしない。
「朝ご飯できたって…、っ!」
腕を引っ張られて布団の中に引き込まれる。
目の前には確信犯的な恭平くんの笑顔があった。
悔しさで頭の中がいっぱいになると、背中に手の感触がした。
見てみると、器用にエプロンの紐が解かれていた。
「ご飯冷めちゃう」
「…ゴメン」
恭平くんの表情が笑顔から一気に申し訳なさそうなものに変わる。
そんな顔をされたら流石に怒れない。
それに嫌ってワケじゃない。
恭平くんの唇に自分の唇を重ねる。
自分からはまだ恥ずかしいけど、最近は努力してる…と思う。
「ありがと、理乃ちゃん」
遠回しの返事は恭平くんに伝わったみたい。
朝から好きな人の最高の笑顔を見られた。