Kiss me, Darling! | ナノ
冗談じゃ済まない


「子どもの名前?」

「うん、今のうちに考えとかないと!」


恭平くんがまた変なことを言い出した。


「予定ないよね?」

「俺の中ではそろそろ出来る予定!」

「…それは初耳だよ」


しかも恐ろしい予定だ。


「とにかく、時間がある時に考えとこうよ」


是が非でもこの話題を押し通すつもりらしい。
反論するのも疲れるので、私は大人しく考える事にした。


(苗字が世良になるんだから…)


「京で良いんじゃない?」

「ギャグで流そうとしないで!!」

「じゃあ恭で良いよ。恭平くんの名前から取りました、的な感じで」

「何でそこは譲らないの!?」

「だって英語の授業の時とかにカッコいいよ?」

「むしろからかわれるから!!」


いい案だと思ったのに必死に反対される。
恭平くんは何か嫌な想い出でもあるんだろうか。


「あ。でも譲葉になる可能性もあるんだよね」


ふと頭の中に浮かんだ一つの可能性。
口にしてみると、あんなにうるさかった恭平くんが急に静かになった。

さっきの調子で反論してくれないから変な雰囲気になる。


「恭平くん?」

「…………」

「半分くらいは冗談だよ?」

「…………」


半分は本気なの、とかいつもだったら突っ込んでくれるのに。
まあ半分は本気だけど。


押し黙る恭平くんの顔を覗き込んでみる。
その表情を確認する前に、顔をぐっと近付けられてキスされた。


「ん…っ、ふぁ…」


深くて長いキス。
合間に名前を呼ぼうとしても言葉ごと飲み込まれる。


やっと解放されたと思ったら、今度は強く抱きしめられた。


「冗談でも…そんなこと言うの許さないから」


恭平くんの表情は見えない。
だけど、気持ちは痛いほど伝わった。


「ごめん…」


恭平くんの気持ちを、ちゃんと全部信じられなくて。


「…理乃ちゃんが可愛いから許す」

「何それ」

「こういう時だけ素直なんだもんなー」


恭平くんはやっと笑顔を見せてくれた。
私が一番大好きな笑顔だった。



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