短編 | ナノ
キミノカタチ
「金平糖ってどうしてこんな形なんだろ?」
一粒を光に透かすようにして眺める理乃ちゃん。
俺も袋から一粒とって見てみた。
言われてみれば、小さくて可愛らしいくせに攻撃的な形をしている。
「小さくてもなめんなー、ってこと?」
理乃ちゃんが手のひらに乗せた一粒を口に含む。
俺はその面白い例えを自分の持つ一粒に当てはめてみた。
そう見えないこともなくて笑ってしまう。
「だったら恭平くんみたいだね」
その言葉に俺の笑顔が引き攣る。
理乃ちゃんは言うだけ言って、また楽しそうに金平糖を眺めている。
「トゲトゲしてても可愛いってことだよ。理乃ちゃんみたいに」
俺が思ったことを言ってみる。
すると理乃ちゃんは不服そうに俺を見た。
「私トゲトゲなんてしてない」
不貞腐れてるって言うか、拗ねてるって言うか。
こういう所が本当に可愛い。
俺は手にしていた金平糖を口に運ぶ。
そして理乃ちゃんの腕を掴んで引き寄せた。
「そーいうところ」
素直な恋人の口をキスで塞ぐ。
理乃ちゃんは、そんな俺を目を閉じて受け入れた。
口の中の金平糖はキスの間に溶けていった。
ほんのりと残る甘さは、目の前で顔を赤らめる恋人とそっくりだと思った。