短編 | ナノ
手帳の正しい使い方


この時期の雑貨屋に並べられる、来年のスケジュール帳。
嫌でも来年というものを意識させられる。


「そんなワケで買ってみた」


つまらなそうにテレビを見る恋人に見せ付けてみる。
けど見向きもしないから見せ付けられない。


「どーいうワケだよ。文脈つながってねーし」

「来年こそは計画的に生きる!」

「お前よく今まで生きてこれたな」


遼くんは相変わらず酷いことばかり言う。(まともなツッコミとも言うけど)


「どーせ三日と持たないくせに」


もうそんなことも言わせないんだから!


スケジュール帳は今年の10月から始まっている。
来年への予行練習として、明日から使うことにした。


そう意気込んだ二日後。


「そもそも書くほどの予定がない…」

「暇なヤツ」


私は机に突っ伏す。


遼くんが言うほど私も暇じゃないつもりだ。
毎日ちゃんと予定もある。
だけど、ほとんどは書かなくても覚えられるものだ。


だから手帳は未だに新品のまま。
今からこんなじゃ先が思いやられる。


今回ばかりは遼くんに何を言われてもしょうがない。


「本当に三日も持たねーとはな」


遼くんがスケジュール帳を手に取って中身を見る。


「…何も書いてないのかよ」

「書くことがないんです」


他の女の子の手帳は一体なにで埋まってるんだろう。
心底不思議でならない。


遼くんは同情してくれたのか、溜息をついて手帳を机の上に戻す。


「理乃」

「なんですか」

「明日の予定空けとけ」


意外すぎる言葉。
だけど、女の子の手帳が埋まってる理由が分かった気がした。


「さすがに同情してくれた?」

「ちげーよ」


覚えるために書くんじゃない。
忘れないために書くんだ。


「俺との予定だけ書いとけ」


今感じてる、嬉しいって気持ちを。



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