短編 | ナノ
ホットミルク
「これ飲め」
私の目の前にホットミルクが置かれる。
それは温かそうに湯気を立てていて。
美味しそうな香りと色をしている。
身体が冷え切っていた私にはとても嬉しいものだ。
(でも私、言葉には出してない…)
今日のことは私の過失。
そのせいで緑川さんに迷惑をかけた。
これ以上、困らせられない。
そう思っていたのに。
それを淹れてくれた緑川さんを見上げる。
目が合うとまた頭を撫でられる。
「飲んだら風呂に入れよ」
そう言って、緑川さんは風呂場の方に行ってしまう。
リビングには私一人が残された。
自分のことは自分でしないといけないのに。
緑川さんに甘えてちゃダメなのに。
分かってるのに。
こんなに嬉しいから、自立はまだ無理だ。
「…大好き…」
小さな告白の返事は無い。
だけど、そのホットミルクはとても優しい味がした。
戻る