短編 | ナノ
恋人らしく
膝にほど良い重みと暖かさを感じる。
肩を叩いてみたい衝動に駆られるけど、何とか我慢。
代わりに恭平くんの頭を撫でる。
すると恭平くんは気持ち良さそうに目を細めた。
「寝ても良いよ?」
撫でる手を止めないまま問いかける。
恭平くんはいつもの子どもみたいな笑顔を見せる。
「寝ないよ。理乃ちゃんともっと話したいから」
そんな恥ずかしい台詞をさらっと言う。
こういう所、嫌いだけど、大好き。
「理乃ちゃん、今日はどうしたの?」
「何が?」
「今日は優しい…」
そんなの当たり前。
好きな人が落ち込んでいたら、優しくしないわけにはいかない。
元気な恭平くんが、私は好きなんだから。
「恋人だからね。恋人らしく」
こんな時しか好きって気持ちを示せない。
恭平くんみたいに、普段から言葉にしたり出来ない。
だから私は行動で示す。
「うん。何かこういうの、すっげー良い…」
こんな些細なことで元気を出してくれるなら。
いくらでもやってあげる。
「痛いの痛いの飛んでけー」
「それ恋人じゃなくて子ども扱い!」
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