短編 | ナノ
もっとがんばりましょう


相変わらず散らかっている恭平くんの部屋。


ベッドの下を覗いてみる。
奥の方に薄い本が何冊か積み上げられている。
手を伸ばして一番上にあるのを取る。


「あ。新しいやつだ」


パラパラと簡単に中身を見る。
うん、肌色。


「ああーーーーー!!!」


叫び声に顔を上げる。
恭平くんが赤いんだか青いんだかって顔をしている。
かと思えば、すごい速さで走り寄ってきて、私からその本を奪う。
途中だったこともあって、私は少し不満。


「どこで見つけたの!?」

「ベッドの下」

「それは分かって……、つーかダメ!とにかく見ちゃダメ!!」


あんなベタな場所に隠しておいてそんなこと言われても説得力が無い。


「見て欲しいのかと思ってたよ」

「んなワケないでしょ!!」

「だって隠し場所がベタ過ぎるし」

「そうかもしれないけど…反応が違うでしょ!普通は怒るとこじゃないの!?」


普通の恋人ってそうなんだろうか。
でも私は別に怒りは感じない。


「怒るどころか…逆に安心したよ」

「へ?」

「制服図鑑とか、女子高生とかのロリものが出てこなくて」

「俺のイメージ!!!」


恭平くんの所有物は、系統としては巨乳美女が大半を占めていたりする。
変な性癖とかは無さそうで安心する。


目の前で騒がしかった恭平くんが急に静かになる。
今度は完全に青ざめている。
何に気付いたんだろうか。


「……理乃ちゃん」

「なに?」

「もしかして他の隠し場所も知ってたり…」

「うん」


ベッドの上に立って、更に背伸びをして本棚の上に手を伸ばす。


「あ。こっちも新しいのがある」

「そんな前からバレてたの!? つーかチェックしてたの!?」

「うん」


ベッドの下と同じように積み上げてあるDVDの山を崩していく。
恭平くんは単純だから、お気に入りのものほど上にあるのだろう。


「恭平くんはこのタイトル好きだよね?」

「っ、もうやめてくれー!!」

「きゃっ…」


私を止めに(?)ベッドに上ってきた恭平くんにタックル(?)される。
不安定な足場で完全な不意打ちを喰らって、思わずバランスを崩した。
恭平くんも後先考えずの行動だったのか、私と同じ方向に倒れこむ。


「いたた……」


幸いにして、倒れたのはベッドの上。
それでもやっぱり、思いっきり背中を打てばかなり痛い。


「理乃ちゃん…」

「…!」


恭平くんの顔が目の前にある。
事故(?)だけど、恭平くんに押し倒されたような形になってしまってる。


気まずくて目を逸らすと、さっきのAVが目に入る。
本棚の上にあったDVDが衝撃で落ちてしまったのか、ベッドの上に何個か散らばっている。
…変な光景だ。


いつも思うけど、私と恭平くんにムードなるものは存在しない。


「とりあえず退いて?」


雰囲気はともかく、この体勢のままじゃドキマギして仕方が無い。


「恭平くん。退いて欲しいんだけど」

「…嫌だ」

「え?」

「理乃ちゃんは俺のこと馬鹿にしすぎ!今日こそ見返してやる!」

「それって本人に直接言うことかな…」


ベタな場所に隠したり、それを見つけられて焦ってみたり。
どこか格好つかない恭平くん。


それでも、真っ直ぐな想いをぶつけてくれるから、好きなんだ。





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