短編 | ナノ
紙一重の戦い


理乃ちゃんを家に招いた。


自分の家みたいにくつろいでね、とは言った。
部屋にあるもの何でも使って良いから、と確かに言った。


だけど、本当にそうされると、困るんだ。


「……理乃ちゃん」

「なにかな、恭平くん」


俺のベッドの上で寝そべってサッカー雑誌を読む理乃ちゃん。
構わない。構わないんだけどね。


理乃ちゃんは女の子なワケで。
今日はスカートなんか穿いちゃってるワケで。
そんな状態で足とか無造作に動かすと、その、見えちゃいそうなワケで。


「あ、飲み物ね。ありがと」


寝そべったままコップを受け取る理乃ちゃん。
そのまま器用に飲む。


…勇気出して言え、俺!


「理乃ちゃん、起きて」

「ん?」


理乃ちゃんは不思議そうな顔をしながらも、上体を起こしてくれる。
立っている俺を上目遣いで眺めてくる理乃ちゃん。
それだけでもクラッと来るオレは、たぶん相当ヤバイ。


「あのさ、寛いでとは言ったけど…今みたいにされると少し困るって言うか…」

「どうして?」


細かく説明するわけにはいかない。
そうしたら俺、変態みたいじゃん。
下心あるみたいじゃん。(少しはあるけど)


「俺だって男なんだから」


恥ずかしい。けど何とかぼかして言えた。
ちゃんと伝わっただろうか。
理乃ちゃんの顔を見てみる。


(あ、あれ…?)


理乃ちゃんはいつも通りの笑顔を浮かべている。
こういう時って普通、顔とか赤らめて恥ずかしがるんじゃないの?
何で俺の方が赤くなってるんだ?


「そうだね。恭平くんは大人の男の人だもんね?」


今、すごく「大人の」を強調されたような…。
嫌な予感に冷や汗が止まらない。


「無防備な年下の女の子に手を出したりなんて…しないよね?」


この先の数時間は、自分との戦いになると告げられた。






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