短編 | ナノ
それは反則です
直視できない。
「理乃ちゃん。…俺、何かした?」
「…してない」
「じゃあ何で俺の顔見てくんないの?」
「…知らないっ」
「やっぱり俺なんかした!?」
恭平くんは珍しくスーツを着ている。
いつもは子どもっぽくて、全然年上っぽくない恭平くんなのに。
何だか大人に見えるというか、色気があるというか。
これがスーツの力か。
私ってそう言うフェチみたいなものがあったの?
でも私、他の人がスーツ着てても何も思わない。
恭平くんとスーツって組み合わせが駄目なのかな。
ああ、もう分からない。
横目で盗み見てみる。
やっぱり駄目だ。
何と言うか、カッコ良すぎる。
「…恭平くんは絶対サラリーマンとかしちゃダメ」
「何の話し!?」
毎日スーツ姿の職業なんてダメだ。
視覚の暴力すぎる。
「えっと、出来る限り選手でいたいと思ってるよ?」
「…ばか」
「今日は厄日なの!?」
そういう事じゃない。
勝手に自爆してる私に気付かないなんて。
本当にこの人は、見た目ばっかりでダメだ。