彼女が風呂に入ると言って洗面所に向かってから割とすぐ。
何枚かの壁を通って小さくはなってるけど、確かに悲鳴が聞こえたので俺は風呂場に急行した。

「どうしたの!?」
「世良さん…」

呆然と立ち尽くす彼女がいた。手に乗せた何かをじっと見つめている。

「世良さん、大変です」
「なにが…つーかそれが?」

否定を望みながら確認をすると、肯定の頷きを返された。

「固形入浴剤が真っ二つです」

これってそんな固形スープみたいな名称だったんだ。
そんなツッコミは置いとくとしても、取りあえずこの世の終わりみたいな顔はやめてほしい。

「落としちゃったの?」
「いいえ、袋を開けたらもう割れてました」

同じ箱に入ってた他のヤツは大丈夫だったのにそれは不思議だ。
でも目の前の女の子は不安そうな顔をやめない。

「問題ないと思うよ?」

割れた入浴剤を彼女の手から取って湯の張った浴槽に放り込む。
小さな泡を吐き出しながら沈んでいくソレをしばらく二人で見つめていた。

「…凶兆でしょうか」
「え?」
「だってこの国では鼻緒が切れたり黒猫が横切ったりすると不吉なんですよね?」
「そうだけど…」
「それならこれも不吉なような気がします」

どういう発想なんだ。
一理なくもない気がしないでもないけどやっぱり変だ。

それでもきっと彼女は本気で、本気でそう思ってるから今にも泣きそうなんだろう。

「吉兆かもしれないじゃん!卵割ったら黄身が二つでラッキーみたいな!」
「茶柱的な感じでしょうか?」
「多分それ!」

二つ入ってたならともかく割れてたんじゃ不吉だと言った後で気がつく。
我ながら苦しいフォローを押し通すと彼女は表情を明るくさせた。

「そうですね、何だかそんな気がしてきました!」

その台詞にお礼を付け足されたらもう色んなことが気にならなくなってきた。

彼女の笑顔を見れたんだから俺にとっては吉兆だったのかもしれない。
そんな風に思った。


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バ●です。そして数十分前の私の実体験です。
そう言えばこの小ネタ集は実話が元ネタの場合が多いですね。しょーもない実話(笑)

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