最近めぼしいエロゲーがない。
だからお金が貯まった。厚みのない札束が出来た。札束と言えばビンタ。私も誰かを叩いてみたくなった。リビングに兄さんがいた。叩いてみることにした。
ぺし、と情けない音がした。
「なにすんだよ!?」
「叩いてみた。札束で」
「なんで満足気なんだよ!少しは悪びれろよ!」
「満足だから」
「実の兄を札束で叩いて満足ってどういうことだよ!?」
よく分からないけど怒られた。
何でだろう。札束で叩かれると幸せという概念は一般的じゃないんだろうか。いや、きっとそんなことはない。札束で叩かれたら人は絶対に幸せだ。
ぺしっ。
今日も人の家で我が家のように寛ぐ招かれざる客人を叩いてやった。
「…………」
「…………」
何故だか無言が続いた。
「…なにすんだテメェ」
「お金が貯まったので札束で叩いてみました」
きちんと持っていないとすぐにくたびれる薄い札束を見せる。赤崎という人は眉間に皺を寄せた。
「幸せじゃないですか?」
その人からの答えは無かった。
そして、そんなことをしたことも、それに関する疑問も忘れた数日後。
頭にとても重い衝撃と、バシッというしっかりとした音を確かに感じ取った。
「…何するんですか」
「お前が俺にしたことをしてやったんだよ」
そう言われた数秒後に全てを思い出して合点がいく。
「幸せだろ?」
意地の悪い笑顔と確かな厚みを持った札束。
それに湧き上がるのはいつもの出所がよく分からない怒りじゃなくて。
「初めてあの人にときめいたかもしれない…」
「ええええ!?」
兄さんの叫びが少しだけ熱を冷ました。
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「札束チョップ!」とか言って母親の頭を薄い札束で叩いたらマジギレされた五家宝です。
赤崎くんは多分200万円くらい銀行で下ろして復讐に当ててます。