「兄さん、これ読んでみて」

俺の妹は珍しくクイズ番組にでもハマったんだろうか。
バラエティ番組なんかで見るカンペよろしく、横向きに文字を書いた紙を俺に見せてくる。

文字と言ってもクイズ番組でよくある難しい漢字で構成された熟語とかではない。
後方に交じったひらがなを見るに、たぶん人名だ。


「あんしんいんさん?」


小学生時代に習った簡単な漢字の連なりを特に工夫することなくそのまま読んだ。
と言うか工夫の仕方が分からない。

『安心院さん』

持ち上げられた紙にはただそう書かれている。
その文字をもう一度よく見て、そして紙を持っている妹の顔を見る。

すると何故か、妹は感動を噛み締めて小刻みに震えていた。ように見えた。

「兄さんなら素でやってくれると信じてたよ!」

俺の見立てはやはり間違っていなかったらしい。妹はえらく感動していた。
それはもう、面白いゲームを見つけた時と同じように。

でも喜ぶ妹を前に俺にはいくつもの疑念が浮かぶ。まず一つ目。


「え?え?俺なんか間違えたの?」


俺は書かれてある通りに読んだはずだ。
むしろ間違う要素がなかった。なのに妹のこの反応。

たぶん俺は十中八九、読み方を間違えている。


「ううん大丈夫、むしろその読み方が正しいんだよ」


接続詞に『むしろ』とか使われてしまった。これは100%間違っている。
引っ掛けにもホドがある。下手なクイズ番組より出題が難しいじゃないか。

だけど妹は間違いだと言わない。そうすると俺もそれを否定しにくい。

「……ホントか?」
「うん!」

久しぶりに妹の満面の笑顔を見た。
ちょっと気になり出してきた正解とか、それでどうでもよくなった。


「大好きだぜー兄さん」


口調が普段の妹と全然違うから、きっと何かのキャラの台詞なんだと思う。
それでも妹の口から言われた台詞なら嬉しい。

こういう時、俺ってゲンキンな兄貴だと自分で思う。


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今更だけどアニメ化おめでとう。めだかちゃんネタでした。
世良さんと椿くんは素で『あんしんいんさん』読みをやってくれると信じています!


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