「最大のライバルって誰?」
今日もリビングでゲームをする妹に、俺は定番の質問をする。
「…兄さんの?」
俺達の会話が突拍子もないのはいつものことだが、これはさすがに聞き返される。
この質問は定番と言ってもスポーツ選手にとっての定番だからだろう。
「俺じゃなくてお前の。誰?」
「…………」
いつもの軽いノリで会話を進めたいのに、今日に限っては妹が渋る。
「…インタビューされた時の参考にしたいから」
仕方なく、この話題を切り出した本当の理由を付け加えた。
それでようやくコイツも納得したらしく、俺からテレビに視線を戻した。
(それが合図ってのも悲しいけど…)
ちょっぴり気落ちする俺に対して妹はいつもの調子で答える。
「自分自身とか定番なのを言っとけばいいでしょ?」
「定番の質問に斬新な答えを返したいんだよ!」
「素人の考えだなあ…」
「俺はプロだっつーの!」
そう返すとそこでピタリと会話が止まる。
俺が妹を言い包められるわけもない。ただただ謎の沈黙が続く。
そして完全に場の雰囲気が重苦しく変わった頃、絶妙のタイミングで妹が口を開いた。
「…アイツにはどうしても負けたくないな」
アイツ?
その疑問を俺が言葉にする間もなく、妹は言葉を続ける。
「アイツが来ると、どうしようもなくイライラする」
「何かして紛らわそうと思ってもしつこくて、結局は忘れられないし」
アイツと直接名を伏せられている、妹の最大のライバル。
続く説明から思い当たった人物が一人だけいる。俺は背中に少量の嫌な汗を感じながら。
「もしかして赤崎?」
頭に浮かんだ人物の名前を言う。
「どうしてここであの人が出てくるの。違うよ」
妹がものすごく嫌そうな顔で言う。どうやら本当に違うみたいで…何となく安心した。
「そうだなあ、兄さんで言えばね…」
どうやらもっと分かりやすく例えてくれるらしい。
ぶっきらぼうなヤツだけど、こういう親切なところもあるから俺は良いと思ってる。
そんな思考も数秒後に吹っ飛ぶことになるが。
「いくら座れとか落ち着けとか言っても、ソイツは絶対に兄さんには従わないんだよ」
何だソイツ。
第一、それはただのムカツクやつであってライバルではないような気がする。
と言っても、そういうムカツク後輩ならやはり一人心当たりがあるが。
(まあ赤崎はライバル…じゃないよな? いや、ライバルなのか?)
そう考えると何だかよく分からなくなってきた。
そしてまたもや別方向に思考を飛ばしている俺を無視して、妹は言葉を続ける。
最高の笑顔で、最悪の言葉を。
「兄さんの分身なのにね」
…ん?
この一言でさっきまでの会話が嫌な感じに繋がってきた気がする。
いや、俺の予想はさっきも外れてたんだ。今回もきっと外れてるんだ。むしろ外れろ。
「ヒント1、ソイツは朝にやってきます」
俺が心の中で葛藤をしている時間を、妹がどういう風に捉えたのか。
そして妹が未だに直接名を伏せているソレの正体、それらが全て分かる一言だった。
おそらく親切で言ったんだろう。俺が一分くらい前に感心した親切で。
「あれ、もっとヒント必要?」
「……………」
どんな風に反応すれば良いのか分からない。
だけど、ここは兄貴として怒るべきなのかと思った。というか、気付いたら反射的に怒ってた。
「お前なあっ!!!」
「だって兄さんが斬新な答えがいいって言ったから」
始まろうとした説教を遮るように正論を言われる。
思わず言葉に詰まった俺を見て、妹は楽しそうに笑った。
「最大の敵は自分の中に潜んでるんでしょ?」
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最近エロゲ三昧だったから文体がギャルゲチックになってしまっている…
内容ですが、答えが分からないとワケ分からないし、分かっても何も面白くないですね(ぇ