いつも通りの和やかな夕食を、一つの鈍い音が一変させた。

それはもうヤンキー映画の喧嘩シーンでしか聞かないような短くて低い音。
口で真似るなら「ゴッ」って感じ。

しかも悲劇はそれだけに留まらない。

手を離れた茶碗は机にぶつかった後、ひっくり返って中に入っていた白米を吐き出した。
茶碗の執念と言うべきかそのご飯は綺麗な半円を描いたお碗型だった。


「わ、私…」

茶碗の主は涙目でうろたえる。
確かにショッキングな光景だけど、泣くほどではないと思う。

「せっかく世良さんが揃えてくれた物だったのに…」

彼女が拾い上げたお碗には皹が入ってしまっていた。
目に見えて皹が分かるということは、もう使えないことと同義だった。

それでも、そんな可愛い理由で泣いてくれるんなら嬉しいと思う俺は少し意地が悪いだろうか。

「ちょうど新しいの買おうと思ってたとこだし、また買ってくるよ」
「でもこれ新品…」
「俺ってほら!何でも飽きやすい性質だから!」

そして無理のある俺の誤魔化しにも彼女は笑ってくれて。

「ありがとうございます、世良さん」

いつだってまっすぐな感情を向けてくれるんだ。


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管理人の身に起きた実話です。あれはショックだった…

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