「堺さんに料理もらってきた!」

いきなり夕飯は用意しなくていいと言われて、どうしたんだろうとは思ってた。
そういうワケですかとタッパー越しでもすんなり納得できるほどの見事な料理が目の前にある。

「これはとても美味しそうです…!」
「でしょ!早く食べよっ」

世良さんに急かされて手早くお皿に盛り付ける。
私の盛り付けの腕前に関係なくますます美味しそうに見える料理に複雑な気持ちが募った。

「あの、ところで堺さんって…」
「チームの先輩だよ?」

世良さんのお話しによく出てくるからそれは知ってる。でも重要なのはそこじゃなくて。

「やっぱり男の方…ですよね」
「そうだけど?」

あっけらかんと言い放たれる。
料理を口に運ぶお箸がちょっとだけ重く感じて動きが鈍る。それを口に入れることを躊躇した。

「どうかした?」
「…いえ」

男の人がこんなに美味しそうな料理を作ってる。
世良さんもいつもより喜んでる気がする。美味しい料理が食べれることは私も嬉しい。

私の理想が目の前にある。でもそれは私の作ったものじゃない。

この世界に来てから料理は頑張ってきたつもりだったけど、本当に『つもり』だったことが分かる。
きっともっと頑張れたはずだ。

違う世界から来たとは言え女の子なのに、こんなんじゃ全然ダメだ。

「この料理とっても美味しいですね」
「うん!」

今は素直に笑っておこう。密かな決意は内に秘めて。


時間と努力を積み重ねていけばいつかはたどり着けるんだろうか。
でも、それにはどれくらいの時間を要するだろう。きっとものすごく長い時間だ。

どうかその時も世良さんが隣にいてくれますようにと、小さく祈った。


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悪気はない世良さんとのギャップが書けて幸せな不完全燃焼俺得話でした。
堺さん料理上手い説は公式じゃないのにものすごい説得力。彼は家事スキル高そうですよね!

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