「つ、椿大介ッス」
兄さんがチームの後輩とかいう人を家に連れてきた。
その兄さんは部屋に何か取りに行ったけど、見ず知らずの人と二人にされても困る。
「「………………」」
妙な沈黙が続く。
初対面の一般人と合う話題なんて持ってない。でもこの状況は気まずすぎる。
「…最近はダイスケって名前が流行ってますよね」
気まずさに負けた。かつてない敗北感でその人に話しかける。
「え…」
「どこもかしこもダイスケだらけですよね」
「スイマセン…」
別に責めてるわけじゃないから謝られても困る。
こちらとしても、慣れないことだから如何せん言い方がキツくなってしまう。
うう。今から本気出せ私。
「ダイスケって名前の声優が集まって何かやるみたいじゃないですか」
「せ、せーゆー?」
駄目だこいつ。早くなんとかしないと。
元から人とそんなに話す方じゃないけどこの人との相性が最悪なことだけは分かる。
ああもう、早く兄さん帰って来い。
「遅くなってわりぃ!二人とも仲良くしてた?」
いつになくちょうどいいタイミング。兄さんがとても頼もしく見えた。
「あ、あの…」
「ん?どうしたんだよ椿」
「その…」
「だから何だよー」
「……スイマセン…」
この人って誰にでもこんな感じなんだ。
兄さんは頭の上にはてなマークをいっぱい飛ばして私を見てきた。
「椿と何かあったの?」
特に何かあったワケじゃないんだけど、この空気は本当に何なんだろう。
「その人のことを私がいじめたのかもしれない?」
「マジで!?」
「そ、そんなことないッス!」
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オチがないのがこの話のオチです。本当に相性が悪い二人はこうなるという主張。
椿くんが兄世良に対してモジモジしてたのはヒロインの名前を聞きたかったからという裏設定。