「実は働いてる笠野さんです!」
「なんだよ、俺は働いてなんかないぜ?」
「そのさり気なさがカッコイイ笠野さんです!」
「旅人だからな」
「では旅人の笠野さん。何か欲しい物はありますか?」
「言ったらくれんのか?」
「経費で落とします」
「そりゃあ困るぜ。貧乏クラブなんだからな」
「えー」

そういやコイツ自分の仕事はどうしたんだ。また後藤や有里あたりがきっと喚いてんな。
仕事サボって遊んどきながら目の前でぶーたれるコイツを少し懲らしめてやるか。

「おーい、お前ら」

偶然通りかかった若手連中を呼び止める。そしてまだ隣で拗ねてるヤツを指差した。

「次の試合で勝ったらコイツがご褒美くれるってよ」

双方から全く質の違う叫び声が上がる。片方は歓喜で、もう片方は驚きだ。

「どうしてそんな話しになるんですか笠野さん!」
「普通の仕事したくねえんなら違う所で働くしかねえだろ?」
「ち、違います!働いてます!…今も」
「まあ考えといてやれ。反故にしてやんなよ」

視線を逸らして分かりやすく嘘をつく小さな背中を強めに叩いてやる。
少しの慰めと期待を込めて。

頼むぜ。勝ち星のために働いてんだからよ。


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季節はずれ第二段。
時間がなくて見送ったネタでした。時間があってもこんなデキですが(泣)

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