好きって3回唱えたら。 | ナノ
第0日


魔法を手足のように使い、本当の手足を使わなくなった世界。
そんな世界に私は生まれた。


魔法はとても便利だ。
大半のことは何でも一人で出来てしまう。


だから、他人と繋がる必要がなくなってしまう。
ここでは家族との繋がりさえ希薄だ。


そんな中で祖母と親しくする私は奇異の目で見られた。
それでも、私は祖母の話しを聞くのが大好きだった。
祖母はいつもこことは違う世界の話をしてくれた。


魔法を使えない代わりに、他人との繋がりがある世界のこと。


それは聞けば聞くほどに不思議で興味深く。
私はそれがとてつもなく羨ましかった。


「おばあちゃん、夕月もその世界に行ってみたい」


話を聞くたびにそう祖母にせがんでいた。
その度に、祖母は優しく微笑んで私の頭を撫でた。


「たくさん勉強して、誰よりも魔法が使えるようになれば行けるよ」


私はその言葉を信じて必死に魔法の使い方を学んだ。
そして同年代の誰よりも優秀になった時、祖母の言葉が本当だったと知る。


優秀なのを理由に、違う世界に行ける権利を得た。
私はもちろん、祖母に聞いた世界へ行く事を希望した。


面倒な手続きを済ませて、今日はやっと出発の日だ。


「碧海 夕月」

「はい」

「期限は一週間だ。それと自分の義務は分かっているな?」


この世界で得られるのは『違う世界へ行く権利』だけ。
『滞在する権利』を得る為には、その世界の取り決めに従った『義務』がある。


その義務とは、その世界に住む一人の願いを3つ叶えてあげること。
もう人選まで済ませてくれているらしい。


私は杖をぎゅっと握り締める。


今まで学んできた魔法で、その人の願いを叶えてあげよう。
私の持ってる力を全て使って、喜んでもらおう。


他人の為に魔法を使えるなんて初めてだ。
お役に立てるように頑張ろう。


「それでは行って来い」

「はい!」


さあ行こう。
夢にまで見たあたたかい世界へ。




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