好きって3回唱えたら。 | ナノ
第2.8日
「この世界に失望してない?」
仲直りをした帰り道。
世良さんにそんなことを聞かれた。
「どうしてですか?」
「だって始まりがこんなだったし…」
バツが悪そうに呟く世良さん。
この人は本当に優しい人だ。
昨日会ったばかりの私をこんなに気遣ってくれてる。
私はどうだろう。
この世界に来て一度でも人の気持ちを考えた?
世良さんの気持ちなんて考えた?
全部自分の為にやってた。
だから怒られたんだ。
「失望なんてしません」
「ホント?」
疑っている様子の世良さんに私は頷きを返す。
「私やっぱりこの世界が大好きです!」
人を想う気持ちで溢れているから、この世界は暖かいんだ。
私もそんな風になりたい。
世良さんを見ていると本当にそう思う。
「…そっか」
「世良さんはどうですか?」
「うーん…」
世良さんが歩きながら空を見上げる。
そして私を見て笑った。
「俺も好きかな」
どこか照れくさそうな世良さん。
その表情を見て何となく考えてしまう。
(私は、自分の住んでた世界を好きって言えるかな)
この世界なら大好きって素直に言えるのにな。