好きって3回唱えたら。 | ナノ
呪文は必須


一つ目の願いを使った。
夕月ちゃんは壊れた窓を元の形に修復する。


彼女は本当に魔女なんだ。
こんな光景を見せ付けられたら認めるしかない。


それと同時に、また新しい疑問がひとつ。


「呪文とかってないんだね」

「呪文?」


不思議そうに首を傾げる夕月ちゃんは普通の女の子に見える。
でも、違うんだよな。


「呪文って何ですか?」

「えっと…魔法使う時に唱える特別な言葉?」


魔法を題材にする小説やらアニメやらには必ず出てくる。
本当の魔法使いが使わないならきっとデタラメだ。


「らしく見せる演出だろうけど、本物の魔法使いには…」

「そっか!」


夕月ちゃんが何かに気付いたように手を叩く。
すると、直ったはずの窓ガラスが再び音を立てて崩れた。


「え…あれ!?」


驚く俺を余所に、夕月ちゃんは破片の山の前に立つ。
そして杖らしき物を軽く振って見せた。


「アブラカタブラひらけゴマー」


彼女が満面の笑みでデタラメな呪文を唱える。
俺が今まで見てきたどのファンタジーよりもデタラメだ。


だけど、破片になった窓ガラスは元の形へと戻る。
何もなかったかのように部屋の中を薄らと映す。


目の前の魔法少女は俺をドヤ顔で見つめる。


「こんな感じですか?」


俺が魔法に対して勝手なイメージあるのと同じか。
彼女もこの世界の知識は偏っているようだ。


…こんな二人で七日間もやっていけるんだろうか。


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