高杉晋助という男に出会い、鬼兵隊という集団に入れられてから三日が経った。 いや、もしかしたら一週間くらいは経ったかもしれない。
とにかく、私は新入りとして取りあえず反社会活動に勤しんでいる。多分。
「新入り!今日こそは働くッス!」 「嫌っす」 「うがああぁぁぁあああぁ!」
不思議な喋り方をするこの来島また子という人はいつも怒っている。
働けと言われたら働きたくなくなるのは万物共通の法則だろう。 そう思うのに、何故か私は奇声と共に大量の銃弾を浴びせられている。
手近にあった番傘でそれをガードしていると、しばらくして銃弾の雨が止んだ。
「もう傘たたんで大丈夫ですかー?」
広げたままの傘から少しだけ顔を出して様子を窺う。 すると見えたのは、何やら慌てた様子のまた子さんと不審な男。
私をここに連れてきた張本人でありながら放置を決め込む愉快な男だ。
「よォ」
片目しか見せないこの怪しい男はとても働いているように見えない。 だけど、また子さんはこの男のことを怒らない。
「新入り!挨拶するッス!」 「…お疲れ様でーす」 「なんッスかそのテキトーな挨拶は!晋助様に失礼ッスよ!」
宇宙のどこかにいるお母さん。私は今、世の中の理不尽というものを味わっています。
「程々にしといてやれよ」
男のその一言でまた子さんからの理不尽の嵐がぴたっと止む。 何だかそれもまた理不尽に感じた。
「ソイツが真面目に働いたらこの星なんざ数日で滅んじまうぜ」
いや、それはさすがに無い。
私は心の中でそうツッコミを入れるが、高杉晋助は気にしない様子でこちらに背中を向ける。 また子さんも私にこれ以上なにかを言う気はなさそうだった。
よく分かんないなあ、地球人って。
取りあえずそう完結してジャンプを読もうとすると、もう無いと思っていた高杉の声が聞こえた。
「後で俺の部屋に茶ァ持って来い」
働かなくていいって言ったり、働けって言ってみたり。 本当によく分からない。この組織は。
「また子さーん。高杉さんが後でお茶を持って来て欲しいそうですよ」 「働けェェェェ!」
静かだった船内に再び銃声が響いた。【終】
何がしたかったのか本当に分からない。 取りあえず鬼兵隊のファンの皆さんごめんなさい。
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