「なあ」

短く呼びかけて、振り向く恋人の頬にキスを落とす。

「ほっぺにおべんとついてたぞ」
「!」

もちろんウソだ。しかし律儀に驚いてくれる恋人に愛しさを感じる。

「有難う御座います、木吉さん」

ウソなのに礼を言われてしまった。照れたような笑いがまた可愛い。

次からは気をつけよう、みたいな決意を固めた顔をする。
もちろんその顔も可愛かったが、オレはその表情を崩したくなって耳元に顔を寄せる。

「ウソ。オレがキスしたかっただけ」
「!」

今度こそ顔を真っ赤に染めた恋人を一層愛しく思って、その小さな体を抱きしめた。

オレだけが余裕ないみたいじゃ、ちょっと悔しい。
いつだって同じ気持ちでいてほしいんだ。【終】


木吉さんが偽者すぎるためボツになった短文でした。
3分クオリティなのにこんなに砂糖多めになってしまうとは完全に予想外でした。

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