あこ様から・3000番 キリリク






『おはようございます。』

『おはよう。』

今日も、ただ挨拶を交わすだけ。あたしは、九番隊の平隊員。
相手は、十番隊の日番谷隊長。

天と地ほども違う彼の存在を、唯一近く感じられるのが、毎朝通る道で交わす挨拶をする瞬間。

でも、それだけ。

ただ、それだけの為に毎朝通る彼を待ってしまう自分は、ストーカーみたいだ、と少し気が滅入る。
今までは見るだけで幸せ、そう思っていたけど、挨拶を交わせるようになって、少しだけ欲が出る自分。
もしも彼の隣を、並んで歩けたらどんなに幸せだろう。
友達としてでもいい、二人並んでたわいもない話をしながら歩けたら…

『あっ!日番谷隊長おはようございます!』

『おぉ』

『おはようございます、日番谷隊長!』

『おはよう』


もちろん挨拶をするのは、あたしだけでは無くて、すれ違う人みんなが声をかける。

そんな後ろ姿を見つめていた。


『ただいま帰りました』

『おぉ、咲夏。悪かったな、使っちまって』

『いえ』

九番隊の隊舎に帰って、檜佐木副隊長に挨拶をした。

『日番谷隊長』

『…えっ?』

『会えたか?』


檜佐木副隊長の思いもよらない一言にドキリとした。
すると、イタズラそうに笑う檜佐木副隊長。

『お前、分かりやす過ぎだって』
『か、からかわないで下さい…っ』

『頑張れよ、あの人いまフリーだから。』


頑張れ、なんて言われても、相手は隊長で、あたしは平隊員で。彼を想う人はあたし以外にたくさんいるはず。
無理に決まってる。




STAR
()


それから、あたしは日番谷隊長に挨拶するのをやめた。

あたしなんかが挨拶したって、日番谷隊長はあたしを覚えてなんかいないだろうから。
檜佐木副隊長にあたしの想いがバレてしまったけど、他の隊員にはバレ無いようにしようと思った。
それから数日して、毎朝通る道で、日番谷隊長の姿を見つけた。

だけど、声はかけ無かった。



(…おい)
(…え?)
(最近見かけ無かったけど、何かあったのか?)




*END*