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『ねぇ隊長。今日は現世でね、ハロウィンっていうお祭りがあるんですよ!』
「はろうぃん?なんだそりゃ。渡嘉敷、お前また松本にでも変なこと吹き込まれたんだな。ったく。あいつの云うことを鵜呑みにするなと前々からしつこく言ってるだろうが」
『今回は乱菊さんじゃなくって隊長LOVEの雛森副隊長です!』 「……俺がいつ雛森のことを好きだと言った」
『むふふ。乙女の勘というのは時に、科学で証明できない力を発揮するのですよ!』
「……乙女でない俺には到底理解出来ない問題だな」
『や〜ん。隊長拗ねちゃってます!?ねぇ、拗ねてるの!?キャハ』
「前から心配してたんだが。お前、頭大丈夫か」
『心配しなくても、だいじょーぶですよ。隊長はそこら辺の女より充分、オ・ト・メですから』
「誰が乙女だ。つーか、質問の意味を取り違えるな」
『はいはい。愛しの雛森副隊長だったら良かったのにすいませんねー。お馬鹿で有名な咲夏ちゃんで』
「だーかーら。なんでお前は俺の話をちっとも聴かないんだ!俺は雛森のこと、幼馴染みとしか思ってねぇよ。それに…好きなやつが他にいるしなッ。ゴニョゴニョ」
『ふぁい。咲夏ちゃん、お馬鹿さんですがしっかり肝に銘じておきまーす!ウフフ』
(コイツッ!……俺の話を聴きやしねぇ)
『そういやさぁ。隊長もあたしと同じで気にしてますよね?背のヒ・ク・イこと!』
「なッ!渡嘉敷、テメェ!!」
『まぁまぁそう怒らないで下さい、隊長。ちゃんとあたしは理解してますから。隊長のいたいけな心を!』
「はぁ!?」
『好きな女が俺のすぐ近くにいる。アァー!めちゃくちゃにしてやりたいッ。だけど俺にはあいつを押し倒すほどの身長がねぇ』
「……なんだその危なげな妄想は。俺今、かなり引いたぞ」
『みたいな感じですよね!?うん、分かりますよぉ。あたしも似たような経験したことありますから』
(こいつ。マジで変態人【変態+変人】と名付けても、足りないくらいの危ない人だな)
『だけどそんな隊長のために今日はちょっとしたプレゼントがあるんです。あー、これ一応ハロウィンってことで渡そうと思ったんですけど、トリックオアトリートとかいちいち聞くの面倒なので割愛させて貰いますね』
「いや、なんで割愛するんだよ?このイベントで一番重要な台詞だろ!?」
『だって隊長、お菓子なんか持ち歩いていないでしょ。ってか知らないふりして、隊長も結構詳しいじゃないですか!』
(ギク)
『あっれぇー?後ろに隠したものはな〜んでーすかッ??あたしには【現世で流行のハロウィン特集☆】と書いてある雑誌にしか見えないんですけどねぇ』
「し、知るか!松本に、無理矢理渡されたんだッッ!!」
『もう!そんな照れなくっていいですよー!隊長も寂しかったんですよね。仲間はずれにされちゃって』
「俺は別に寂しくなんか……!」
『でも大丈夫です!!そんな隊長にとっておきのプレゼントを用意してますから』 (絶対になんか裏がある)
『ジャッジャカジャーン!』
「……」
『何ですか、その冷たい視線は!隊長がそんな態度ばかりだと、さすがの咲夏ちゃんもいじけちゃいますよ。うぇーん』
「アーソウカ。ソレデ?」
『棒読みなんて、酷い!』
「明らか嘘泣きしてるヤツがいう言葉か」
『ふん。まぁいいですよ。どうせ隊長もあとであたしに感謝することになるんですからね……フフフ』
(見るからに怪しい!しかも何だよ、その得体の知れない液体は)
『おー!流石が隊長。気づくのがお早いことで。でもこれは本当に凄いんですよ。なんってったって、これは好きな娘をイチコロで落とせる代物なんですから』
「――惚れ、薬ってことか?」
『うーん。(ちょっと違うけど)まぁそんなもんです。ね!隊長、欲しいですよね!!』
これで隊長の悩みも万事解決☆あたしってなんていい人なのー!と自画自賛する渡嘉敷に、俺は冷たい視線を送る。惚れ薬なんて都合のいいもんこの世にあってたまるか。そんなもんが気軽に手には入ったら、恋愛で悩むヤツがアホみたいじゃねぇか。というのも俺だって男なんだから、好きな女の一人や二人いるわけで……。それがどういう訳か目の前で飛び跳ねている変態人なのが、未だに不思議なのだが。
まぁ兎に角、もうずっとこいつに対しては呆れる(馬鹿にする)態度しかとってない手前、告白なんてこと出来るはずがない。というか告白しても冗談として処理されそうだ。「たいちょうってギャグセンスないんですね!」みたいな感じで。うん、あいつにならかるーく流されそうだ。
そんな風に頭ん中を整理して、やっぱりなんだか嫌な予感がするので、あいつに断ろうとした。だが開いた口は返答に使われることはなかった。渡嘉敷が俺の返答を待たずに、ボトルを流し込んできたのだ。まず、いきなり口に広がる異様な苦さに顔を歪める。うげッ!なんて不味いんだ、この液体!!一年前に(これまた無理矢理)食わされた渡嘉敷の激マズけぇきの上をいく不味さだ。なんとか止めさせようとあいつの腕を掴んでみるが、そこは腐っても鯛。砕蜂に一目おかれるだけの体術は未だに衰えていない。練習している光景なんぞ、見たことはないんだが。
「んぐぐ!はーなせ!馬鹿野郎!」
『よしッ。これで全部だッ!!』
パァと効果音がつきそうな勢いで渡嘉敷が笑みを浮かべる。――不覚にも、ドキリとしてしまう俺がいる。惚れた弱みだから仕方ないけど、俺も厄介なヤツを選んじまったと少し後悔。こんなサボり癖の酷い部下のどこがいいんだか。
が。そんな暢気な考えも視界に入ってきた白い毛によってたちまちなくなった。え゙??え゙?なんだ、この白いふさふさの物体は。あ゙?これ勝手に動いて――!?はぁ!?これ俺の腕?!いや、まさか、そんなことが……!そう思うのだが自身の違和感には抗えない。ゆっくりと自分の体を隅から隅まで見渡してみると、一層今の状態が明白になった。
「これは、しっぽか……!?しかもなんか頭に変な感触が――って耳!?はぁッ!?なんだ、これ!」
『うふふ。これは予想以上の出来映えですな』
「おい!渡嘉敷!!これはどういうことだ!??ちゃんと分かるように説明しろー!」
『えーっとですねぇ。まぁ簡潔に言えば、あたし達女性死神協会から隊長への小さなプレゼント。って感じです』 「女性死神協会だとぉ!??」
なんだかもの凄く嫌な予感がする。只でさえこんな姿になって最悪も良いところなのに、これ以上なにが起きるんだって感じだが、確実に何かが迫ってくる気がする!つーか絶対になにか来る!渡嘉敷の意味ありげな妖笑がそれを物語っている。
俺が「知ってること全部吐け!」と怒鳴ると、あいつは待ってましたと言わんばかりの口調でそっと執務室の戸を開いた。霊圧が感じられなかったため、誰もいないだろうと思いきや…そこにはカメラを持って絶好のシャッターチャンスを狙っている松本達女性死神協会のメンバーが――。「お前ら、今からなにをしようとしている」という問いに、渡嘉敷はさも当たり前だと言うような顔をしてこう言った。
「隊長のそのかわゆい姿を撮る以外になにかあるんです?」
Are you all set? (みんな準備はいいですかぁー!)(イェーィイ!!)(パシャパシャ)(これで今月の瀞霊廷通信は隊長のオオカミ姿でオッケーね☆)
『こんな可愛い隊長を見れば、誰だって襲いたくなるでしょ?』 「なるか!!ボケ渡嘉敷!つーか覚悟しとけよ、お前ら!」
過去拍手→2009/10/31
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