※下ネタ注意
んぐぐ。くそぅ。こんにゃろう、何だって周期表なんか覚えなきゃいけないんだ!記憶力の悪い渡嘉敷さんがそんなもん覚えられるとでも!?
「とりあえず今度の期末までにカルシウムまで覚えとくように」
あの鬼畜教師め。カルシウムつったって原子番号が、えーっと、んーっと、20個くらいあるじゃんか!しかもその他にも亜鉛やた銅やら鉄やら…色々と足していったらもう本当に無理。人は忘れてこそ何ぼの生物でしょ。こんなに覚えて何になる!?
「必ず暗記しておけよ。じゃないと、結合の種類も価電子数も分からなくなって0点だ」
ハイ。わかりますよ?非金属と非金属で共有結合。金属と非金属でイオン結合でしょ。そこはちゃんと理解しているんです、あたし。お隣のこっわい幼馴染に睨まれながら、授業聞いていましたから。だから周期表さえみればあたし問題解けるんです。多分。
信じてくださーい!!
ばふ
『痛ったーああ!!』 「つべこべ言わずにとっとと覚えろ」
大事な神経が集まっている頭を殴られました。きっとこの冷徹幼馴染にあたしの大切な脳細胞ちゃんは10ほど殺されちゃいました。だから周期表を覚えるなんて無理です。ばたんきゅー、グッバイしろ。
ぼふ
ベッドに倒れ込んだあたしの頭をまたもやしろは叩いた。今度は枕で。
「たかが20個くらい5分で覚えろ!」 『それはしろだから出来るんでしょ!?あたしの頭とあんたの頭は造りが違うんだってば、っとわぁ!』
最後まで言わないうちにしろは思いっきり、あたしの腕を引っ張って、そのまま机に座らせた。ちょっと強引過ぎません?
それからずっと前に配布された周期表をばんと広げ、あたしの前にどんと座る。
「今から30分以内に覚えねぇと、この前の赤点取ったテストのことおばさんに言うぞ」 『はぁっ?』
それ反則!お母さんに言わないって前に約束したっ。確かしろの…好きなバンドのCDを(無理やり)貸して、それでチャラになった!!うん。たった3ヶ月前のことだ。あたしが間違えるはずがない。
ぎりっとしろを睨み返すと、どこからともなくお母さんの声が聞こえてきた。
「しろくんー!おやつにパイ焼いたんだけど、いるかしら?」 「お願いします」 『あたしもいるーー!!』 「咲夏には聞いてないわよ。周期表くらい一人で覚えなさい。そんな小さなことくらいでしろくんに迷惑かけないの」 『別にいいじゃん!しろは文句言わずに来てくれるんだから』 「あんたね、いい加減にしないとしろくんに愛想尽かされちゃうわよ」
階段を上ってきたお母さんはあたしにお説教してくる。何さ、お母さんいっつもいっつもはしろに甘いんだ。だってそうでしょう?誕生日プレゼントだって、クリスマスプレゼントだって、お年玉だって、絶対にしろの方が良いもん貰ってる。「咲夏がお世話になってるからねー」とか言いながら。しろにお世話になってるのは認めるけど。特に先日のボタン掛け間違い事件では(笑)
だけどこの待遇の差はなんだ!?あたしは不満顔で口を尖らせる。お母さんは得意げにしろの隣に座った。
「だいたい周期表なんて、ほら!確か覚え方があったでしょ。水兵リーベーって。ねぇッ?しろくん」 「そうなんですよ。でもこいつリーベーの意味が分からないとか、NaとMgの所が可笑しいとかごちゃっごちゃ文句言ってばかりなんスよ」 『だって本当のことだもん!水兵リーベーボクの船…えぇっと』
それにね、ボクの船、だったら
B,O,C,N,F,Ne
じゃね?なんで
B,C,N,O,F,Ne
なのよ。しろにはOの入る位置を予め覚えとけば問題ないだろとか鼻で笑われたけどさぁ。きっと他にもいると思うよ。あたしと同じふうな考えを持っている人が。 しかも、しかも!Bとかマイナーな元素名とかも知らないから。なにんだっけ。ぼ、ぼ、ぼぉっ?(※ホウ素)
「はぁ、ったくなんでお前は素直に周期表覚えらんねぇんだ」 『だって……難しいだもん』 「数学とかの解き方を教えるんなら俺も力になってやれるけど、暗記もんは咲夏が頑張んねぇと」 『うん、分かってる……』
本当はお母さんの言ったとおりこんなことで、しろを呼ぶべきじゃないのは分かってるけどさ。困ったときの神頼みならぬ、困ったときのしろ頼みじゃん。あたしの場合。
(いつでも俺が助けてやるから)
とか幼稚園時代にした約束に高校生になってもすがり付いているわけです。甘ちゃんですね、ハイ。一応自覚しております。
『水兵りーべー僕の船、七曲がるシップスクラーク、か?』 「ん。合ってる」
頭に周期表を思い浮かべ、ゆっくりと記憶を繋いでいく。うぅんんん。難しいー!でもこの語呂合わせって、やっぱ疑問を感じる。しっくりこない。覚え方なんて大概が無理やりだけど、気になっちゃうんだから仕方ない。
他にいい語呂合わせなにのかねぇ……と頭の中で元素をいじくってみるけれど、どれも不良品どまり。もっとスパッと一発で覚えられるような語呂合わせが欲しい。そしたらテストもばっちしで、しろもお母さんも一石二鳥だ。だけど自分で考えるには効率が悪すぎる。つまりこういうときは――。
『しろー他の覚え方教えて』 「知らん」 『うそぉー!しろ、絶対にもう一個くらいストックあるでしょ』 「ねぇよ。つかストックとか言わねえし」 『あるあるある。絶対にその顔はある!!』
しろに教えてもらうのが一番早い。仮にストックがなかったとしても、すんばらしい頭脳の持ち主であるしろは新たな語呂あわせを考えることくらい造作も無いはずだ。あたしと長年付き合ってるからこれくらいの無茶振りくらい、しろは抗体が出来てるだろうしね。持つべきものは頼れる(=一方的に迷惑かけても許してくれる)幼なじみだ!
あたしってなんてラッキーガールなんだ。しろみたいなスーパーマンが幼なじみだなんて、端から見れば超羨ましいポジションじゃん。基本的に女の子には紳士だし、頭脳も体力も平均値を余裕で上回っちゃうし。あはっ。ヤバいな……シロちゃん。あんたに出来ないことなんてないでしょうが。頼りにしてますよ。
『ほら、もったいぶらないで教えてよ!』 「……」 『しィろーお!!』 「……ないことは、まぁない」 『じゃ、さっそくそれ教えて』
ちょっぴり乙女ちっくに目をキラキラさせながらしろを見つめると、一言「気持ちわりい」と一蹴された。ヒドい!あたしはこれでも女の端くれなのにー!
とかなんとか言ってる間にしろはあたしの制鞄から、うっちィくんの付いたケータイを取り出した。こらぁ!乙女の部屋に無断で入るのは良しとしても、乙女の鞄を勝手に探るのはNGでしょ!?あ、因みにうっちィくんてのはしろに誕生日プレゼントで貰ったうさぎのストラップのことね。ケータイよりもうっちィくんの方がデカいってのが難なんだけど、うさぎらしからぬ不細工さが気に入っている。
『ちょっとぉ!あたしのうっちィくん手荒に扱わないでよ。それ以上顔がぶっさいくになったらどうしてくれんの』 「黙れ。つーかお前こんなバカうさぎのどこがいいんだよ。趣味わっる」 『その趣味の悪いうさぎちゃんを選んだのは紛れもなく、あたしの幼なじみの日番谷さんデスヨ』 「……それはともかくだな。周期表の違う覚え方知りてぇなら、俺じゃなくって修兵にでも聞け」
はい?なんでそこでシューヘーくんが出てくるのさ。しろが知ってるんだったら、回りくどいやりかたしないで、教えてくれればいいじゃん。なんだって、修兵に聞かなきゃならんのだ!
プルルル、プルル
(あー、はいもしもしー?)
おい!ちょっと待てしろ!なんで勝手に電話してんだ。てかもう修兵でちゃってるじゃん。しかも自分でかけといて無言とは……。ほら、修兵怒ってるじゃん。無言電話かよ、とかぶつぶつ言ってますよ?いやでもあいつ確認してから電話に出ろよな。イタズラ電話だったらどうすんの。
「バカ!早く出ろよ」 『勝手にかけといてそれはないでしょ!』
(あ……修兵?ごめんね、あたしなんだけど) (その声、咲夏か。オマエ電話かけてきたんならちゃんと喋れ) (ごめんごめん。ちょっと訳あって)
「御託はどうでもいいからさっさと本題に入れ」 『うっさい、急かすな』
横から大声で割り込んでくるしろにかなりイラっときながらも、半信半疑で周期表の新たな覚え方を聞いてみる。あたしと同等かそれ以下の成績の修兵が本当に知ってるわけ?くだらない語呂あわせだったら、怒るからね!絶対にしろが考えたやつのほうが質が良さそうだし。てかしろも意地悪しないで教えてくれればいいのに。ねー?
変なところだけ頑固なんだから。困っちゃう。
(ふぅん……水兵りーべー以外のやつな。知ってるちゃ知ってっけど、本当にいいのか?) (なにが) (いや、まぁ俺に聞いてきたってことはそこはクリアしてるよな) (ちょっと修兵?) (うん。俺は質問に答えてだけだから責任はない)
勝手に自己解決した修兵は、最後に一言、日番谷には言うなよ?と意味不明な念押しをしてきた。言うなよっていうか、すぐ隣にいるんですけど……と横目でしろを見てみるけど、あいつは知らん振り。まぁいいよ?あんた勝手に電話して、面倒なことになったなぁとか思ってないから!うん。
本当にいいんだな?と本日三度目のしつこすぎる注意を受けた後、あたしは頷いた。
(大人の階段のーぼるーって、ヤツだな) (は?) (いやいやこっちのお話だから気にすんな)
修兵の声を聞いたしろは、隣で吹きだした。ベットに顔を埋めて必死で笑い声を抑えてる風だった。突然お腹をかかえるほど大笑いをするしろにあたしは呆気からんとする他ない。なに?頭、壊れちゃった感じ?てかしろがこんなに笑うのってかなり珍しいんですけど……。
(じゃあ一度しか言わないからよーく聞けよ) (はいはい。だからさっさと教えてってば)
後から思ったんだけど、この時きっと修兵はにんまりと笑いながらケータイ越しに喋ってたんだろう。
「エッチな変態リッチなベッドで……ピーピーピー(※自主規制)」 『はぁ!?』 「ピーピーピー、ピピピー(※自主規制)」
いきなりの下ネタオンパレードな覚え方に、あたしは顔を赤らめた。そしてブチ切れる。
『もういいっ!黙れヘンタイ修兵!!!!』 「んだよ、聞いてきたの咲夏じゃねぇか」 『ふさけんなふざけんなふざけんな!』
こんな下ネタまみれの覚え方なら聞きたくなかったに決まってんでしょ!?分かれ、バカ野郎!修兵を無視してぶちっとケータイを切った後、あたしはすぐさま手元にあった筆箱をしろの方へ投げつけた。いってー!とか言われてもあたしの怒りは収まらない。
だって、だって、そうでしょ!?まさか、修兵はともかく、しろがこんな下ネタの語呂合わせを教えようとするなんて!
『しろ、知ってて修兵に言わしたんでしょ!?』 「まぁな……つーかお前が知りたい知りたいって煩かったから教えてやっただけじゃねぇか」 『サイテー!!修兵だけでなく、しろまでこんなヘンタイだったなんて!』
もう一つの覚え方 (ホント信じらんない!)(俺も男だってこったな)(近寄んな、スケベしろ!)
それ以来化学のお勉強をしろに頼ることはなくなりましたとさ。
*あとがき* キャラ崩壊してごめんなさい……!なんか一回こういう日番谷くん書いてみたかったのです。あたしは中2のときに必死で周期表を覚えたのですが、その頃はこんな覚え方しりませんでした。というかこれ知ったのもつい最近です(笑)
2010/06/14
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