急いで病院に駆け付けると
雛森は点滴を受け、診察用のベッドに横になっていた

医者から簡単な説明を受け
たいしたことはないという事がわかり、安心した


「貧血……か、無理しやがって」

「ごめんね、迷惑かけて」

「いや、ゆっくり休めよ」

「もう、すぐ家に帰れるみたいなんだけど
保護者呼ばなくちゃいけないって言われて、…近くにいて頼りに出来るのが日番谷君しかいなくて…」

「…わかってる」


雛森は頑張りすぎる上に体も弱い
だからこっちに来る時、心配していた雛森の両親に
俺が出来るだけ面倒を見ると約束していた


「学校はどうやって抜けてきたの?」

「今日はまだ行ってねえ、遅刻して行こうと思ってた」

「…彼女さんは?」

「お前が気にする事じゃねえよ」


それから
雛森の準備が整い次第すぐに病院を出る事が出来た


「お前さ…、そんな薄着してるからぶっ倒れるんだよ」

「うるさいなあ、日番谷君に言われたくないよ」

「せっかく迎えに来てやったのにそれかよ」

「日番谷君なんか呼ぶんじゃなかった」

「じゃ、先に帰る」

「もー!待ってよ!」


そんな他愛もない会話をしながら
雛森をアパートに送っていった


「おとなしく寝てろよ」

「うん、…あ、日番谷君、今日これからどうするの?」

「……特に何も考えてねえけど」

「ちょっと寄って行かない?」

「…俺は…「眠そうな顔してるよ?少しうちで寝て行けば?」

「日番谷君、自分の時間も大切だよ」


雛森が俺の手を握った


「ね?だから…」


その瞬間、ドンと大きな音がした


「あ!大丈夫ですか?!」

「おいっ……」


雛森が音の鳴る方へ走っていった
そうすると、聞き慣れた声が
その場所から聞こえてきた

「……、だ…大丈夫です」

「荷物、たくさん落ちてるよ」

「本当に大丈夫ですから…」


そこにいたのは紛れもなく咲夏で
雪の中、鞄の中身を道中にばらまいていた


「咲夏………」


咲夏のいる場所まで走っていった


「…学校行く気にならなかったから、予備校行こうとしたの」


咲夏は俺と決して目を合わそうとはしなかった


「…そうか」

「この道が駅前に行く近道だったから
……びっくりしちゃって鞄落としちゃった」

「………………」

「親戚には…、見えない」

「……幼なじみだ」

「…もう、何も聞きたくない」



咲夏は落ちている物を何も拾わずに、そのまま駅前の方向へ歩いて行こうとした


「待てよ」


咲夏の細い手首を掴むと


「…あ、忘れてた」


そう呟いて、咲夏は俺の手を振りほどき

前にプレゼントしたネックレスと指輪を取り、俺に投げ付けた


「咲夏…」

「大っ嫌い!!」


咲夏はそのまま走って行った
でも、止められなかった
今の俺にはどうしていいかわからない


「………」

「あれ?さっきの子は?落としたプリント遠くまで飛んでたよ」

「……咲夏だ」

「…え??」

「俺の…彼女だ」

「…え……うそ…、……これ、どうする?」


筆入れ、教科書、時間割やらプリント
咲夏は何も拾わず行ってしまった


「…ありがとな、俺が…届けておく」

「うん……、…怒っちゃったんだよね」

「いや………、気にするな。………いつもの事だ」


雛森から咲夏の荷物を受け取り
その場を後にした



きっとあの様子だと予備校にも行っていない

そうすると、多分駅で人目もはばからず泣いてるだろう


そう見当をつけて
駅へ向かった