「大変だったんだぜ、これあつめんの」
修兵先輩はそういってビニール袋を上げてみせた。

「季節外れの花火なんてどこにも売ってないからね。」



花火!?




「あっここだ!おぉ〜いっ」
咲夏が考える間もなく、遠くから聞き覚えのある声が

「あいつらにも声かけたのかよ。」
ちょっと嫌そうに日番谷。

「賑やかのほうがいいだろ?」




遠くに見えるのは
桃ちゃんと阿散井君だ。


二人とも白いビニール袋をもっている。




もしかして…






私は隣にいる冬獅郎の顔を見る。





やっぱり





「まだ明るいし、あの日みたいにでかいのは無理だけど…花火、やろうぜ?」

「うん。」







私たちが付き合うようになった始まりの日。



放課後、勇気をだして
私は部活が終わったばかりの冬獅郎にあのペットボトルを渡しにいった。

その時あまりしたしくもない私が
そんな行動にでることは、すごくドキドキした。


「おっおつかれ…。」


「っ?」



「あのっ私、えっと…これどうぞっ!!」




私は何も言えなくて
ペットボトルを冬獅郎に押し付けて
その場から逃げ出したんだ。

恥ずかしくて

消えてしまいたかった



私はそのまま
学校の近くにある河原

そう、ここまで走った。



そしてもう絶対変な奴だと思われた!とか言って
一人で落ち込んでたら
あっというまに真っ暗になっちゃって



そしたら空にドーンッ!って綺麗な花が咲いて


もっと近付こうと立ち上がったら
冬獅郎と目があってしまって
今度は逃げようとした私の手を冬獅郎はつかんでくれた。



「まてよ、一緒に花火見ないか?」


「えっ?」
「あとさっきの、サンキューな。」



その声が優しくて
その言葉が嬉しくて


私の中の「好き」って感情が溢れ出した。




「私…日番谷君が好きです。」


ドーン


ドーンッ


花火が連続であがるから
なかなか冬獅郎は口をひらかなくて不安になった。




そしたら二三歩前にでて
ちょうど音がやんで


「俺も!」



それだけ聞こえた。

その時私は夏の花火大会が雨で延期になって
その花火を今日うちあげてくれた奇跡に感謝した。



だってもし、花火がなかったら
あの日はずっと泣いてたかもしれない。




だからあの日の花火は
大切な大切な思い出。





それを冬獅郎も大切にしてくれてたんだね。

皆も私たちのために花火探してくれたんだ。



私はなんて、幸せなんだろう。