「あ、雨…」

渡嘉敷は空を見上げて、慌てはじめる。
それに反比例するように、雨は次々と降ってくる。
それに比例して渡嘉敷は余計慌てる。
なんだか笑えてしまった。
そんな渡嘉敷に、手に持っていた傘を開いて頭上に差し出す。


「ほら、入れ」

「…え、あの、いいんですか?」

「ずぶ濡れになって風邪でもひきたいなら、入らなくて結構だが」

「お邪魔します!」

照れていた渡嘉敷は、俺のひとことで結局傘に入った。
別に合い傘くらい、気にする必要もないだろうに。
そう渡嘉敷を横目で見ていると、渡嘉敷はくすくすと笑っていた。


「おい…?」

「日番谷隊長、随分可愛い傘をお使いなんですね」

そう言いながら渡嘉敷は傘の柄を指差す。
…そこにあるのは、ピンクの桜模様。


「…仕方ないだろ!四番隊にこれしか残ってなかったんだよ!」

まだ笑っている渡嘉敷から、何だか気恥ずかしくなってふいっと目を逸らした。
女物だっていうのは分かっていたが…本当にこの傘しかなかったのだから仕方ない。


「…隊長、」

「…何だよ」

笑いを咳ばらいしてから、渡嘉敷が俺を呼んだ。
仕方ないから振り返ってやった。
そうすると、渡嘉敷は満面の笑顔で。


「私はこの桜、とっても綺麗だと思います」

「…そうだな」

俺も傘を見上げると、そこにあるのは満開の桜。
確かに、悪くないな。

…俺はあの咲かない桜をどうこうすることは出来ない。

でも、

「これならいつでも咲かせてやるよ」


日和
(はなさめびより)


『いつか咲夏が一番綺麗だと思える桜に出会えるのを、おじいちゃんは楽しみにしてるぞ』

『え?おじいちゃんの見た桜が一番綺麗なんでしょう?』

『…いつか分かるよ』


(おじいさま、咲夏は出会えたみたいです)

―――
咲夏さま、この度はリクエストありがとうございました。
拍手などメールでも咲夏さまにはお世話になっておりますので、頑張らねば…と意気込んで書いたものの…リクエストいただきましたほのぼのとは何だか掛け離れているような(泣)
まさかの最後だけ…本当にごめんなさい…
桜とか景色とかって、どこにでもあるからこそ、大切な人と見たとききっと本当に綺麗だと思えるんじゃないかなあ…という私の勝手な想像でごめんなさい!
こんな私ですが、これからもお付き合い願えれば幸せです。
是非ともよろしくお願いいたします。


―――
翡白様より頂いたすばらしき小説です^^
日番谷くんがピンクの傘とは!思い切りツボにはまってしまいました(笑)
今年は花見に行かなかったのですが、翡白様のこの小説を読んでから行けばよかったなぁと後悔しました……。
きっと花より団子体質なんで、桜の風流とか難しいのは解らないでしょうが、家族で見に行きたいですね♪
来年は絶対に見に行こうと、ひそかに決意しました(笑)


2010/04/20