「…………ここまで」

「ありがとうございました」

「よし、飯に行くか」

先刻まで武器を交えていた二人がそれぞれの得物を納めて小さく息を吐いた

「ぷっ……」

「なんだ」

「相変わらず、ユウの太刀筋や容姿は綺麗なのに仏頂面なのがすごい勿体ないなって」

「お前もだろう。」









「ハンバーグ定食と蕎麦、おまちどーん!」

「ありがと、シェリー」

「今日も一緒なのね。相変わらず仲がいいわねぇ。あの子と一緒にいて喧嘩しないの、恭ちゃんだけよー!」

「慣れじゃないかな」

右手にハンバーグ定食の盆を、左手に蕎麦の盆を持ちながら雲雀は神田の元へと歩いていく

「はい、ユウ」

「悪いな」

「いいよ。ユウって本当に蕎麦が好きだね」

「まぁな。だが、ジェリーの作るやつが一番旨い」

「僕もジェリーのハンバーグ定食が大好き」

二人は箸を持って食事を始めると無言ながらも殺伐とした雰囲気ではなく淡々と食事を済ませていく。そして彼らの食事が終わる頃に後ろからすすり泣く声が聞こえたことに顔を顰めた

「……っ、うぅ……っ」

「何でこんなとこで追悼してるの。ここ、食堂なんだけど」

「飯が不味くなるな」

「何だと、コラァ!!」

「もういっぺん、言ってみやがれ、ああっ!?」

「おい、やめろバズ!」

「……煩いな」

「メシ食ってる時に後ろでメソメソ死んだ奴らの追悼されちゃ、味がマズくなんだよ」

「テメェ……それが殉職した同志に言うセリフか!
俺達、探索部隊(ファインダー)はお前らエクソシストの下で命懸けでサポートしてやってるのに……それを……それを……っ

メシがマズくなるだと──!!」

「本当のことだろう?」

バズと呼ばれた男性が神田に向かって腕を降り下ろすが神田は簡単に避け、男性の首もとを鷲掴む
その光景を雲雀は冷めた目で見やりながら食器を片付けていく

「うぐっ」

「《サポートしてやってる》だ?」

「違げーだろ。サポートしか、できねェんだろ
お前らはイノセンスに選ばれなかったハズレ者だ」

「げふっ」

「あのさ、死ぬのがそんなにイヤなら辞めれば?
貴方ひとり分の命なら代わりはいるし、別に1人くらい減っても僕は困らないし。科学班じゃないんだしさ」

つまらなさそうに頬杖を付いていた雲雀が口を挟んでから人の気配を察知して神田の方へと目をやった

「ストップ」

「……」

「関係ないとこ、悪いですけど、そういう言い方はないと思いますよ」

「……放せよ、モヤシ」

「(モヤ……っ!?)
アレンです」

「確か……門番の審査に引っ掛かった、クロスが言ってた弟子か」

「はっ、1ヶ月で殉職(くたばら)なかったら、覚えてやるよ」

アレンが神田の手首を握った手に力を込めると男性の首から放されて神田は気に入らなさそうにアレンへと視線を向けた

「だから、そういう言い方はないでしょ」

「早死にするぜ、お前……。キライなタイプだ」

「そりゃ、どうも」

「はぁ……」

二人が睨み合うのを見ながら雲雀は面倒くさそうにため息を吐くと食器を持ち上げて返却口へと向かおうとしたその時、科学班班長、リーバーの声が三人の耳に届いた

「あ、いたいた!神田!雲雀!アレン!
10分でメシ食って司令室に来てくれ。任務だ」

「嫌な予感がする」

「ちっ……行くぞ、雲雀」

「ん。任務だったら、二人で行くのは久しぶりだね」

「そうか?」

「うん。だって前回はリナと一緒でその前はラビだったから
だから、嬉しいな」

ふわりと笑った雲雀に吊られるように神田も笑みを浮かべたのを見ることが出来たのはリナリーとリーバーだけだった




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