雲雀Side


僕とカルテ・フォーロが初めて会ったのは中国に着く少し前だった。神田達と別れ、日本へと向かう途中だった。僕の目の前に立ちはだかったノア
来る途中で何かと邪魔が入り決着もつかず、中国に着いた。そして日本に着く少し前の船上、レベル3との戦いで海へと沈んだ僕の意識が消える中で走馬灯のように夢の中にまで出てきた

「こんな事で死ぬつもりか?リリィ

リリィ?誰、それ……」

「キミの器の名前」

「……器……この、体の……?」

「そう。記憶はお前が知っている通り神田ユウに近いものがある。だがその体は神田ユウよりも、クロス・マリアンやアレン・ウォーカーに縁のある者だ」

「は……?」

いや、なんであのロクデナシ元帥やその弟子の名前が出るのか。確かに教団を離れている間に昔の教団の話とか聞いたことはあるけれど。僕に借金をツケてそのまま教団に送り返した飲んだくれ元帥に縁があるって……

「言っておくが愛人とかじゃねェぞォ?」

「…………」

「あっ、信じてねぇな。つか、ノアの恋人だったお前もロクデナシだと思うけどなァ!」

「…………は?」

今なんといった?ノアの恋人?ノアの誰かだって?
いやそれが本当なら本来この体にイノセンスが適合するのも辻褄が合わないんじゃないかと思ったが、対峙している間に無駄話で確かノアも人間だとか、人間に混じって生活しているとか言っていた気がする、多分

「……だったら、僕は尚更死ぬべきじゃないか……」

ユウの隣にいるのが烏滸がましいこの上ない。イノセンスが僕の手にいるのも、おかしい

「はっ、死ぬなら自分のことをもっと知ってから消えやがれってんだァ!」

「君は一体何をさせたい訳。戦ったり、夢の中にまで現れて」

「お前、矛盾だらけだな?死ねないけど死にたいとか、その存在も全部が矛盾だらけだ。他の奴らみたいに生きる理由とかないのかよ、クソエクソシスト」

そんなの僕が知りたい。こんな記憶と躯がちぐはぐな破壊者、周りに混乱を招くだけじゃないか。それに僕に生きなきゃならない理由なんて……

《恭弥、師匠の借金を賭けて今日も勝負しませんか》
《恭弥くん!兄さんたちにコーヒー持っていくの手伝って》
《お、今日はユウと一緒じゃないんさ?》
《師匠はこういう人だ、諦めろ。神田、恭弥》
《キョーくん、ユーくん、ほんと君たちは手合わせが好きだねぇ》

《恭弥くん、ここはキミの帰る場所だ。ーーおかえり》

《帰ったか。……おかえり》

「……馬鹿みたい」

「お?誰が馬鹿だァ?」

「……くっそ腹立つ。夢の中でやっと気がつく僕に」

気がついたら馬鹿みたいに手放したくないものが増えていた。これは【神田ユウ】としてでもなくて、【リリィ】としてでもなくて、ただの【雲雀恭弥】としての気持ちだと僕は信じたい
他人に振り回されるのはもううんざりなんだ。僕は、雲雀恭弥だ

「カルテ・フォーロ。今度戦う時に礼の代わりに誠心誠意戦おう。君を破壊するのは僕だ」


そうだ。
────邪魔するものは、誰であろうと咬み殺す


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