「主……海上に残ったリナリー嬢と雲雀が戻ってこないそうです……」

「!」

マホジャがアニタに静かに告げるとアニタは目を見開く。一方、甲板では……ラビが自身のイノセンスで船から助けに行こうとするのを制止する船員達の姿があった

「放せよ、放せっ」

「馬鹿野郎、ボウズ!お前、結構重傷だろ。船から出たら危ねえって!!」

「今すぐ女の子とあのボウズんトコまで船戻すからっ」

「ンなの待てるか!オレがビュッと行った方が速ぇえんだよ。……のっ、はなせよぉぉぉぉぉお!」

「ラビくん、やめて!!」

「!ミランダ」

「せせっ、船員さん達に乱暴しないで!この人達は私や船を……っ。お、お願い……っ」

一向に離そうとしない船員たちにラビは言葉を荒らげていくが、駆け寄ってきたミランダの言葉からラビは船員を見やる。しかし、それでも彼の意志は揺らぐことなくミランダを振り払う

「ごめん……」

「ラビくんっ」

「ちちっ、致命傷は、ホントに負ってない!?」

「ああ。いいから気にせんで……」

「しゅっ、出血しそうなところ教えて。ぬ、ぬ、布で縛った方が……」

「んな事、今はどうだっていいだろうが。リナリーと恭弥が心配じゃねェのか!!あいつらはお前らの仲間だろ!!」

「ひっ」

「(はっ)」

「あなたも、仲間でしょ……?違うの……?」

ミランダは震えながらも訊ねるとラビは拳を握り締めてその言葉に答えることが出来ず、槌で船から飛び出す。

「う……っ、ぐぁ……あ……。リナリ……恭弥………どこだ……っ、この辺りのハズなんだ……。冗談キツイって……ヤなこと思い出させんなよ…、……っ」

──僕は、生きる為に戦う

「……生きてろよ……っ、じゃねぇと、ユウに合わす顔がないさ……。なぁ……っ、

リナリィイィイイィー!恭弥ァァァアァァ!!」

ゴボボッ…


ドン!!

突如、ラビの目の前に飛沫があがる。そこに現れたのは肩に雲雀を担いで大きな結晶のようなものを掴んでいる黄色いボディのアクマだった
その姿にラビは目を見開き焦りを滲ませる

「(アクマ!まずい!俺はリナリーみたいに海上じゃ戦えねェぞ。しかも恭弥を人質に取られてんじゃ……)」

「お前、《Jr.》っちょ?」

「は?」

「は、じゃねーちょ。ブックマンのJr.っちょ?手ェ超痛ぇ、手伝ってくんない?恭弥を運ぶのは構わないけど
・・
これ……、アクマのオイラにゃキツいんだっちょ」

「????(何言ってんだ、コイツ……)」

アクマの助力を求める声に思わずラビは目を疑っていたが、結晶の中にいるリナリーを見つける。雲雀と交互に見るラビの疑問に答えるかのようにアクマが言葉を続ける

「まだ生きてるちょ。恭弥も少しずつ怪我は治っていってるっちょよ」

「テメェ!何しやがった!」

「あっ、ひど!オイラじゃねェっちょ、ボケ!オイラは恭弥と知り合いっちょ!それにこの結晶はこの娘のイノセンスだっちょ!娘がレベル3と相討とうとしたところをガードして守ったんだっちょな」

「(イノセンスが!?そんな話、聞いたことねェ。装備型のイノセンスが、適合者の意志なく勝手に考えて動いたってのか!?)」

「……っ、ぅ……」

「あ、起きたっちょか?」

「あ、れ……サチコ……?ラビも……ぼく、生きて…る……?」

意識が朦朧としながらも雲雀は確認を求めるとアクマは頷いた。そんな姿にラビはさらに困惑の表情を浮かべる

「何とか助けられたっちょ。久しぶりっちょ、ヒバリ」

「うん……」

「イテテテテッ、ちょっ、ホント手伝ってJr.!手がモゲるっちょ、イノセンスめっさ痛ェ!!ねェってば!」

「(罠か……?)」

何が何だか分からなくなってきたラビの横を俊足で何かが通りすぎてアクマへとぶつかった。

「ぷげっちょ。何すんだバカやちょ!」

「ティムキャンピー!」

「ちょっ」

「!?」

ピト、とティムは警戒するどころかアクマの頭へと乗る場面を視界に入れたラビは驚愕の表情を見せる。アクマの肩に乗りながら雲雀が頭を抱える

「ちょっとまて、ティっ……ティム……?」

「あー!お前がマリアンのゴーレムか!聞いてたのより、デカくなってんじゃんちょ!」

「おっ、おいおいおいっ、乗る頭(トコ)違うだろ!!なんでよりにもよってアク……」

「あー……やっと意識がはっきりしてきた……。多分クロスの匂いでもするんじゃない?」

「オイラが奴の使いだからっちょか?」

「多分ね」

「へぇ。アクマはアクマでもっ、オイラはクロス・マリアンに改造されたアクマっちょ!」



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